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◆ 「クモとカニ」にかんして、もうひとつ。「ささがにの」という枕詞があるらしい。たとえば、衣通姫(そとおりひめ)の、 ◇ わが背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛のふるまひ予(か)ねてしるしも〔古今〕 ◆ 蜘蛛が糸を張っているのを目にして、今宵はあのひとが来るにちがいない、と胸をときめかすといった内容の歌。ここで「ささがにの」は蜘蛛に掛かる枕詞だが、漢字で書けば「細蟹の」で、「細蟹」とは蜘蛛の異称。 ◇ ささ‐がに 【細蟹】 〔補説〕 クモが小さいカニに似ていることからクモのこと。また、クモの網(い)。 ◇ ささ‐がに 【細蟹/笹蟹】 蜘蛛(くも)の古名。また、蜘蛛の糸。 ◆ と語源にかんしては諸説あるが、 ◇ “ささがに” は蟹が八本足で蜘蛛に似ているからなど ◆ となると、どうだろう? タラバガニか? あるいは、蛸も蟹に似ているか? |
◆ 2009年8月3日の「天声人語」。 ◇ 待っていた坊やが今年もやってきた。とは言っても人間ではない。わが家の鉢植えミカンに姿を現した柚子坊(ゆずぼう)のことだ。葉っぱと見まがう保護色も鮮やかな、アゲハチョウの幼虫をそう呼ぶ▼芋虫、と聞いただけで総毛立つ人もいる。蝶(ちょう)よ花よの成虫にくらべ、幼虫の人気は散々だ。その芋虫も、柚子坊と呼べば愛らしい赤子のように思われてくる。わが柚子坊は、すでに葉を何枚もむさぼり、健康優良児よろしく丸々と肥えている▼柚子坊が1匹育つのに、何十枚も葉を食べるそうだ。何年か前に、1本だけだったミカンが派手にやられた。そこでユズやハッサクを増やした。今なら5、6匹は養える。それでも果実は育つから、収穫の楽しみもある▼〈二つ折りの恋文が、花の番地を捜している〉と蝶をなぞらえたのは、『博物誌』のルナールだった。のどかな春の蝶のイメージだろう。片や炎天に影を落として舞う夏のアゲハは、身を焼くかのように情熱的で美しい▼わけても日盛りの黒アゲハは神秘的だ。その姿を、宙を舞う喪章にたとえた人もあった。幽明の境をひらひら飛ぶ。そんな想像だろうか。精霊の戻り来るお盆の頃にふさわしい、飛翔の姿かもしれない▼さて、わが柚子坊である。羽化まで今しばらく、鳥たちから逃れなくてはならない。あの大きな目玉の模様は敵を威嚇するためにあるらしい。それを見て徳川夢声は「団十郎のような立派な目」と驚いたそうだ。武運つたなく餌食(えじき)にならぬよう、名優の威にあやからせたい。案じつつ願いつつ、夏の日がゆく。 ◆ 柚子坊、こんなコトバがあるとは知らなかったが、辞書にも載っていた。 ◇ ゆずぼう【柚子坊】 アゲハチョウ・クロアゲハ・カラスアゲハなどの幼虫の俗称。ユズやカラタチなどミカン科植物を食害し、刺激すると頭部から突起を出し独特の臭気を放つ。 ◇ ゆずぼう【柚坊】 アゲハチョウ・カラスアゲハ・クロアゲハなどの幼虫。ユズ・カラタチなどの葉を食べて育ち、初め黒色で、成長すると緑色になり、触れると頭の後ろから黄色や朱色の肉角を出す。
◇ 炎天に黒き喪章の蝶とべり |
◆ さいきん、虫のことをあれこれ調べるようになって、はじめて「食害する」というコトバがあるのを知った。たとえば、「柚子坊」をネット辞書で引くと、『大辞林』では「ユズやカラタチなどミカン科植物を食害し」とあり、『大辞泉』では「ユズ・カラタチなどの葉を食べて育ち」とある。園芸に縁のないワタシなどには、『大辞泉』の表現のほうが中立的で好ましいように思えるけれども、趣味であれ仕事であれ、じっさいにユズやカラタチなどを育てているひとには、「食害する」というのがまっさきに思い浮かぶ最適なコトバなのだろう。 ◆ さいきん、身近な虫をあれこれ写真に撮っていて、その虫について調べるたびに、「~を食害する」などと書かれていて、ちょっと気がめいる。 ◇ ウリ類の害虫で、とくにヘチマの花を好んで食害する。幼虫は根を加害するが、ウリハムシに比べて数は少ない。 ◇ 〔昆虫エクスプローラ〕 カラスウリ類の葉を好んで食べ、他にダイズ、エノキ、シソなども食べる。幼虫は地中にいて、ウリ類の根を食べて育つ。 ◇ 〔昆虫エクスプローラ〕 成虫は、いろいろな植物の葉を食害する。灯火にもよく飛んでくる。幼虫は、地中で植物の根などを食べて育つ。 ◇ 〔キッズgoo:図鑑〕 幼虫は植物の根を食べ、成虫も、葉っぱがぼろぼろになるまで食べつくすので、農家や園芸家などから害虫とされている。 ◆ どちらの例も、ひとつめの引用が「食害する」というコトバを用い、ふたつめの引用が「食べる」というコトバを用いている。クロウリハムシもアオドウガネも、好物の植物を食べた結果、「害虫」と呼ばれるわけで、それは仕方のないことだが、「食べる」を「食害する」と表現するのは、どうだろう? 虫の立場と人間の立場が混交していて、ちょっとわかりづらい。食べられた結果を食害というのは気にならないが、それに「する」をつけると、アタマがちょっとねじれる。アタマがねじれることなくすんなり理解できるのは、最後の《キッズgoo》の文章。 ◆ とはいえ、「食害」はもともとは「蝕害」と書いたようで、それならしっくりくるかも。そういえば、「蝕む」は「虫食む」だったなのだなあ。 |
◆ 長野県でこんなニュース、「ブドウ襲うカブトムシ 出荷直前、果汁吸われる被害」。 ◇ 〔信濃毎日新聞:8月5日〕 県内有数のブドウ産地・松本市里山辺で、出荷を控えたデラウエアに大量のカブトムシが集まり、果汁が吸われてしまう被害が発生している。一部の畑では7月下旬から毎朝数十匹が見つかり、専門家は「聞いたことがない」とびっくり。子どもたちには人気のカブトムシが“害虫”になる事態に有効な対策は見当たらず、地元の松本ハイランド農協も困惑している。〔中略〕 カブトムシなど甲虫類に詳しい日本甲虫学会会員の****さんは「落果し、発酵した果実にカブトムシが引き寄せられることはあるが、(木になっている)フレッシュな果実を餌にする例は聞いたことがない」と驚く。 ◆ (「デラウエア」とはいったいどんな高級ブドウだろうかと思ったら、ふつうの種なしブドウのことだったのね。「デラウェア」とも。知らなかった。) ◆ で、ブドウ畑のカブトムシ。これは驚くべきことなのだろうか? 《2ちゃんねる》で、このニュース関連のスレ(【長野】「聞いたことがない」ブドウ襲うカブトムシ 出荷直前、果汁吸われる被害)が立っていたので、読んでみた。 ◇ 27:山形では普通にブドウについてたぞ、カブトムシ。あまり、話題になったことはないから、被害はたいしたことなかったのかもしれんが。 ◇ 45:元葡萄農家の娘だけど、普通にかぶと虫が葡萄のしる吸いに来てたよ。ナメクジの方が被害がデカイ。今年は雨が多かったから、玉割れして汁が出たから、かぶと虫が寄ってきたんでしょ。 ◇ 47:普通にカブトムシはブドウを吸汁するのに、専門家じゃなくてただの学会平会員なんかに聞くから、こういう恥ずかしい記事を世に出してしまう。 ◇ 68:ガキの頃よくぶどう園でカブトムシ貰ってたぞ。元気よくぶどうの汁吸ってた。 ◇ 119:え??? 昔、うちの葡萄の木によくカブト虫が集まって来てたけど、めずらしい事だとは思ってなかった・・・ ◇ 136:昔からカブトはぶどうには、害虫です。みつけたら首むしって退治してました。 ◇ 234:10年以上前から祖母の巨峰畑ではカブトムシは害虫だ。小学生の頃から畑でカブトムシ見つけたら踏み潰せと教えられてきたわ。 ◇ 236:山梨県でも普通かな。子供の頃にブドウや桃の畑に取りに行った。落ちた桃の中にいたりする。 ◇ 269:カブトムシは普通にぶどう食うよ、急にぶどう畑に来るようになったのは付近の樹液出す木を切り倒し過ぎちゃったからでしょ… ◇ 283:これはむかしから普通によくあること。って、さっき知り合いのデラウェア農家の人が言ってたよ。最初からハウスをネットで覆うのは最近常識のことらしい。 ◇ 296:子供の頃だったから20年ほど前になるが、山梨でぶどう狩りに行った。親はぶどうをとっていたが、わしはカブトムシとミヤマ、ノコギリクワガタを大量にとってかえった。おそらく大昔から、ぶどうにはカブトムシはつくはず。 ◇ 355:別に不思議なことではないのでは。果実に群がるカブトなんて数えきれんほどみてきたよ。 ◇ 367:聞いた事無いだと? 30年以上前の俺が子供の頃には近くの葡萄畑にカブトをとりに行くのが日課だった。関東での話しだがな。昔からカブトは葡萄に集る事は俺らガキには常識だったぞw ◇ 388:昔から葡萄園にはカブトムシやクワガタさんがよく来てましたが? いまさら何をニュースにしてんだ? ◇ 392:ブドウ農家に聞いたらカブトがブドウに集まるのはよくある事なんだって。何らかの原因でブドウに傷が付いて汁が漏れたら匂いを嗅ぎつけてやって来る。他の虫や飛び石のような外的要因だけじゃなくて、果汁が多すぎて皮が耐えきれずに裂ける事もあるんだって。 ◇ 418:田舎で葡萄作ってたけど、普通にカブトムシきてたみたいだが・・・ ◇ 437:ブドウにはよく集まるよ。皮が裂けて汁が漏れると匂いに引き付けられてやってくる。 ◇ 452:うちは祖父母がブドウ畑やってたけど、昔からカブトムシは害虫として知られてたよ。30年以上昔のはなしたけど、優しい祖父母は当時小学生だった僕ら兄弟のために、害虫なのに、カブトムシを育ててくれてた。 ◇ 459:何を今さらって感じだな。カブトだけじゃなくクワガタもな。桃やイチゴもやられるんだぜ。 ◇ 475:あれ? 毎年うちの裏手にあるブドウ畑に巨峰買いに行くと、いつも一緒にカブトムシも売られているよ? 沢山ブドウを買うと、欲しかったらタダでもっていっていーよーって言われてるけど。カブトムシがブドウを好きなのは当たり前だと思ってた。 ◇ 525:カブトムシが葡萄に集るのは普通だと思ってた。知り合いのところの葡萄には毎年たくさん来てる。子供が小さい頃はよく昆虫採集させてもらった。ちなみに関東の南の方です。 ◇ 545:実家が果樹農家だけど、この時期はモモ、ブドウ(巨峰)はカブトムシやクワガタムシが毎朝頭突っ込んでるけどね。ブドウは実が太りすぎて表面が割れてしまっていたりすると確実にやられる。桃は果実に袋被せていようが木にネットを張っていようがやられてる。昔からオスのカブトムシやクワガタムシは近所の子供行きだけど、メスのカブトやクワガタ、カナブンたちはどこの農家でもその場で踏み潰されてるw ◆ 複数の意見によれば、ブドウ畑にカブトムシがやってくるのは、それほど珍しいことではないようだ。で、まとめ。 ◇ 607:何か変わったあると、「聞いたことない」と言う人が多いけど、改めてリサーチをすることはない。自分の知識や経験なんて極めて限られてることを覚えておいた方がいいよね。
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◆ 「ブドウ畑のカブトムシ」のハナシで、レッサーパンダの風太のことを思い出した。 ◇ 〔Zaggle.co.uk〕 In May 2005, the Red Panda gained a surge of popularity in Japan when Futa (風太) a member of the species living in the Chiba Animal Park (千葉市動物公園) was found to be able to stand on his hind legs like a human for up to 30 seconds at a time. Not to be outdone, another zoo, the Yokohama Zoo Zoorasia (よこはま動物園ズーラシア) in Yokohama, Kanagawa recently found another "gifted" red panda within their confines, Dale (デール) who is capable of walking a considerable distance bipedal. ◆ なにも英語の文章を引用することもないのだが、千葉で風太が直立すると、"not to be outdone" (負けてはならじと、負けじとばかりに)、横浜ではデールが直立するだけでなくそのまま歩行までしてしまう。かくして、各地の動物園で、"not to be outdone"、つぎつぎとレッサーパンダ(red panda)が直立し始める。というようなことがあったのが、2005年5月だった。その後についてはなにも知らないが、おそらくいまでも、直立したり直立歩行したりしているのだろう。風太やデールが、直立にかんして、"gifted"(天賦の才能のある)な個体であったことはまちがいないだろうが、そもそもレッサーパンダには直立しうる潜在能力があるのだし、風太以前にもその能力を顕在化していた個体も数多くいたことだろう。けれど、記事にするさいには、物語化の誘惑というものがつねにあって、おもしろそうなお話に仕上げてしまいがちになる。そういう意味で、"not to be outdone" はじつに便利なつなぎのコトバなのだった。 ◆ カブトムシに戻って、ふたたび《2ちゃんねる》のスレ(【長野】「聞いたことがない」ブドウ襲うカブトムシ 出荷直前、果汁吸われる被害)から。 ◇ 368:ブドウの味を覚えてしまった。もう、カブトムシたちの間に口コミで伝わっているから、いくら退治しても無駄だねw ◇ 490:今までおいしさを知らなかったんだろ。きっと1匹が試しに吸ってみたらうまくて、カブトムシみんなに広がって話題になってるんだと思う。 ◆ カブト虫も負けず嫌いなのかもしれない。 |
◇ 人の顔を、まっすぐに見られないのだ。自分の子供に向かっては、「話をするときは相手の顔を見て」なんてびしびし言うくせに、自分では人の顔を正視できない。正視をしているふりはするのだ。顔も目もまっすぐ相手を見る姿勢になる。ところが、目の芯が相手をとらえていない。相手の目と自分の目が出会った瞬間、目は何も見なくなってしまうのだ。そんな器用なことができるはずないとお思いになるかもしれないが、できるのですね、これが。 ◆ ちょっとまえ、ああ、いま、たしかに目を見て話しているな、と思ったことがあって、そう思ってしまったのは、これまで、ふだん人の目を見て話しているかどうかについては自覚的ではなかったということなのだろう。考えてみても思い出せない。人に「ちゃんとこっちを見て話せ」と言われたこともあまりないから、いちおうは相手の顔を見ていたのだろうとは思うけれども。そのもっと以前には、意識的に相手の目を見て話そうとしていた時期があった記憶はあるが、そんなエネルギーもいまはない。たぶん、相手の目を見て話すというのは疲れることなんだろう。だから、おそらく、ふだんは川上弘美のように器用に「見て」いるんだろう。そして、ごくまれに、目を見て話しても疲れを感じさせないようなタイプのひとがいて、そのようなひとと話す機会があったときには、「ああ、いま、たしかに目を見て話しているな」と、ふと自覚したりもするのだろう。 |
◆ 2009年8月14日の「天声人語」に柚子坊のつづき。 ◇ そのアゲハの幼虫、柚子坊(ゆずぼう)のことを先日書いたら、思いのほか多くの便りをいただいた。「緑濃き下蔭(したかげ)を舞ひ黒揚羽(あげは)〈危険な関係〉を愉(たの)しむごとし」と、東京の篠塚純子さんはかつて詠んだ歌を送ってくださった。庭では毎年、アゲハが生まれるそうだ▼仙台の池沢祐子さんからは、羽化した黒アゲハの美しい写真が届いた。庭木の柚子坊が次々に鳥に食べられるのを見かね、5匹を網の中へかくまってユズの葉を与えたそうだ。育った蝶は外へ放したという。嫌われがちな柚子坊も、やさしさに感謝だろう▼便りは女性からが大半だった。昆虫といえば少年の専売のようだが、王朝文学の「虫めづる姫君」のDNAが連綿と流れているのだろうか。とはいっても、客観写生を説いた俳人の虚子に〈命かけて芋虫憎む女かな〉の一句もあるから、世の柚子坊よ、油断は禁物かもしれぬ▼わが家の鉢植えミカンの柚子坊は、鳥の目をかいくぐってサナギになり、地震で揺れた朝に羽化した。黒地に黄色のナミアゲハだった。ナミは「並」。ありふれたゆえのやや失敬な名だが、蝶のあずかり知らぬことである▼柚子坊を育て上げた木は葉がだいぶやられた。ピンポン球ほどの青い実を涼しげにぶら下げて、ひと仕事を終えた風情で日を浴びている。 ◆ 読者の短歌に「緑濃き下蔭を舞ひ黒揚羽」。2009年8月3日の「天声人語」に「わけても日盛りの黒アゲハは神秘的だ」。クロアゲハは(川上弘美のように)日陰を好むので、読者の短歌の方がより写生的であるということはいえるだろう。 ◆ 「虫めづる姫君」のDNAの継承者のひとりに柳美里がいる。 ◇ ご存じのかたもいらっしゃるとは思いますけど、わたくし、大の虫好きなんでございますのよ。小学生のころは、「虫博士」と呼ばれておりました。将来は、昆虫に携わる仕事をしたいと思っていたものです。いつか、余生といえるような時間が訪れたら、昆虫採取に没頭したい。 ◆ 「命かけて芋虫憎む女」も数多くいることだろうが、蓼(たで)食う虫も好きずきで、 ◇ 養老 虫好きの女の子って、意外にたくさんいるんだけどね。つい二、三日前、「ゲジゲジは可愛い」とか言う子がいて、びっくりした。 ◆ 「うちの女房」、五感のうちでも触感を重視するあたりが女性的であるのかもとも思ったり。とはいえ、いちばん多いのは、やっぱり「虫めづらない姫君・たち」だろう。 |
◆ ネット上の文章を引用するさいに、もちろん、いちいちキーボードで入力したりはしない。コピー&ペーストすれば、それで済む。ときには勝手に修正することもある。てきとうに、誤字(誤変換)を訂正したり、余分な改行をなくしたり。以前は、勝手に修正することに多少の抵抗もあったが、考えてみると、ブログや掲示板の文章は、ユニークな表記法が多く、なかば「手書きの」文章なので、それを「活字の」文章にするには、多少の変更も許されるのではないか、とテキトウに思うようになった。ようするに、あまり好ましいことではないかもしれないが、自分のスタイルに合うように修正を加えているわけ。 ◆ 判断に迷うものもある。そのひとつが「!」。たとえば、以前に引用した《虫同盟》というサイトの書き込み。 ◇ 「虫大嫌いです☆蝶々やトンボでさえ許せねぇ!!笑」 「虫嫌い!網戸とかにはりついてて足の付け根とか見えたら吐きそうになる!!(ぇ)」 「虫だいっきらいです!!見るのも嫌です。もうこの世からきえてほしいです!」 「虫大っ嫌いです!日光行った時は、とんぼがもぅ。。。」 「蛾がだめすぎです!キモチワルイ、本当に。寒気がするんです(泣」 ◆ 「!」のオンパレード。半角(!)と全角(!)の違いはさておいて、どれも感嘆符のあとにスペース(空白)がない。これが気になる(ときがある)。「虫大っ嫌いです!日光行った時は、とんぼがもぅ。。。」なんかは、「虫、大っ嫌いです! 日光行った時は、とんぼがもぅ・・・」とでもしたくなるが、「虫大嫌いです☆蝶々やトンボでさえ許せねぇ!!笑」になると、「☆」と「!!」が絶妙のバランスで並んでいるので、そのままの方がいいかな、と思ったり。一筋縄ではいかない。そんなわけで、これは原文のママ。
◇ この標識は、若い頃、幽霊が出るところに有るんじゃ、ドライバー等が不意にそういうものと遭遇して事故を起こさないように、警告してるんだ。とよく噂しておりました。それだけに、コレを見つけた時はぞぞ~っとした記憶があります。 ◇ その他・・・いったい何なんでしょうね。危険だから注意しなさいと言われても、危険である理由が「その他」だったら、気をつけようがありません。「その他」という理由で納得のいくことってあるのでしょうか? 「その他の罪で逮捕する!」と言われて納得する人がいるでしょうか。サッカーをやっていて、「その他の反則を犯したため退場しなさい」といわれて納得するでしょうか。「その他の理由でお金をあげます」というのなら喜んで貰いますけどね。(それでも、やっぱり納得はいかない) ◆ 分類するということが苦手で、ここ「MEMORANDUM」に書いた文章をカテゴリー分けしようかと思ったことも何度かあったが、うまくいきそうもないので、ほったらかし。無理して分類するなら、ほとんどの文章が「その他」に分類されることになるだろう。この記事もまた同じ。「その他」というのはずいぶんと便利なものだと思う。 |
◇ 「童貞」「強姦」「さかりのついた」など、およそシャンソンに使われることのない単語が続出し、動物園のゴリラが檻から抜け出し判事を犯すという歌詞で観客を仰天させた1曲です。 ◆ 歌詞、訳詩は《kamp's hahaha: 続・ぶらっとブラッサンス》で読める。あと、《週刊フランスのWEB》でも。 |
◆ 1939年ごろのニューオーリンズ。《Eugene Register-Guard》に掲載された、Madeleine Gilbert Christenson さんの投稿記事から、さらにもうひとつ。チコリコーヒー。 ◇ What was served to us as coffee the first morning was like some thick, black medicine. But I am apt to be tolerant of culinary failures and I waited patiently for something better. The New Orleans coffee drinkers, however, brew the beverage from a dark roast coffee to which has been added about 20 per cent bitter chicory. They call it French drip coffee, and slowly this insidious drink grows on you and you curse to yourself because decent Maxwell House coffee tastes pale and wan. If you look like a tourist the wailtress will ask if you want "northern" or "southern" coffee. ◆ 旅行者のあなたがニューオーリンズで飲食店に入りコーヒーを注文すると、ウェートレスが「北部風」ですか、「南部風」ですか、と問う。南部風(southern)のコーヒーを、と答えると、地元で「フレンチ・ドリップ・コーヒー」と呼ばれる、なにやら黒くどろっとした薬のような液体が出てくることになる。20パーセントのチコリ入りだ。チコリは、 ◇ 葉や根には独特の苦味があり、肥培した株から出させた芽を暗黒下で軟白栽培したものを、主にサラダとして賞味するほか、根を炒ったものをコーヒーの風味づけや代用品にも使う。 ◆ つまり、チコリコーヒーには2種類あって、コーヒー豆に根チコリを加えたもの(もともとは水増しのため、また風味づけとして)とコーヒー豆を使わず根チコリを焙煎したもの(代用品)。 ◇ Root chicory (Cichorium intybus var. sativum) has been in cultivation in Europe as a coffee substitute. The roots are baked, ground, and used as a coffee substitute and additive, especially in the Mediterranean region (where the plant is native), although its use as a coffee additive is also very popular in India, parts of Southeast Asia and the American South, particularly in New Orleans. Chicory, with sugar beet and rye was used as an ingredient of the East German Mischkaffee (mixed coffee), introduced during the "coffee crisis" of 1976-9. ◆ ニューオーリンズのチコリコーヒーのチコリは、コーヒーの substitute(代用品)ではなくて、additive(添加物)ということになる。いまでも、ニューオーリンズではチコリコーヒーを飲むことができて、なかでも「Cafe Du Monde」というコーヒーショップが有名だそう。そのうちいつか、ニューオーリンズに行くことがあったら、ぜひ飲んでみたいものだ。と思っていたら、このカフェデュモンド、 ◇ 1990年にダスキンの経営により日本進出。日本国内では33店舗(2008年3月現在)を展開している。 ◆ あら、日本でも飲めるのね。《Cafe Du Monde》のホームページに、チコリコーヒーの歴史が書いてあったので、これも引用。 ◇ Coffee first came to North America by way of New Orleans back in the mid-1700's. It was successfully cultivated in Martinique about 1720, and the French brought coffee with them as they began to settle new colonies along the Mississippi. |
◆ さいきんは「PhotoDiary」で虫の写真が増えてしまって、申し訳ない。すぐに飽きるかと思ったら、意外に飽きない。以前にも引用したが、 ◇ ニョーボにとって、たいていの昆虫はゴキブリ扱いである。(^^;) ◆ というような感覚のひとが多数なのだろうし、このサイトも個人のサイトとはいえ、できることならより多くのひとに訪れてほしいと気持ちもあるので、あまり不快な写真は載せないようにとこれでも多少は気をつかっているつもり。それが証拠にまだゴキブリの写真は載せていない(と思う)。 ◆ ゴキブリはワタシも大嫌いなのだが、ふとフランス語でゴリラはゴリーユ(gorille)ということを思い出し、そういえばコキーユ(coquille)という単語もあって、これは貝殻のことだった。などとアタマが勝手に連想ゲームを始めてしまって、そのあげく、ゴリブリのことをゴキーユ(goquille)と呼ぶのはどうだろうかとひらめいて、ここに書きとめておきたくなった次第。どうですか、ゴキーユ? ちょっとはセレブな感じが? やっぱり、しない? |
◆ あさぼらけ。4時53分、ミンミンゼミが鳴き始める。4時56分、新聞配達のバイクの音。ミンミンゼミは早起きだ。新聞屋さんは早起きだ。それから、ぼくも早起きだ。夏休みの宿題をはやく終わらせなくっちゃ。30年前の。いまでもときどき夢にみる。 |
◆ 8月17日、日本記者クラブ主催の党首討論会で、 ◇ 〔MSN産経ニュース〕 麻生太郎首相:漢字の誤読につきましては、これは単なる読み間違いであってみたり、メガネをかけずにすっと読むと間違えたりするということもあるんだと思っておりますんで、これは軽率、一言で言えばそういうことになるんだと思います。〔中略〕 いずれにしましても、一連の発言というものが不必要な政治不信を招くことになった、政党に対する不信を招くことになったという点に関しましては、私どもとしておおいに反省しているところです。 ◆ かけるとふりがなつきで漢字が見えるようになる特殊なメガネもそのうち発明されるのかもしれないが、ふつうの老眼鏡にはそんな機能はついていないだろうから、メガネをかけたからといってなにも変わりようがないだろうと思うのだが、もしかすると、もともとの原稿にはふりがながついていて、メガネをかけなかったから、そのふりがなが小さすぎて読めなかった、という意味なのかもしれない。しかし、それならば(原稿を棒読みするだけならば)、演説なり答弁なりを口頭で自らすることをあきらめて、すべて文書で配布してしまったほうが、手間もかからずいらぬ批判もあびずにすむ。それにしても、どうしてかくも頻繁(はんざつ、ではなく、ひんぱん)に漢字の誤読を繰り返すのか? ◇ 中学の時山の手線に乗っていて、「日暮里」を普通に「次はひぐれざとか」と母に言ったら、母はすごく恥ずかしかったようで、すぐに訂正されました。そう、私みたいな漢字を読めない人間は、読めない漢字が文章に出てきてもあまり気にならないんですよね。それを読めないと意味が分からない文章なら調べますが、見ただけで大体意味が分かる漢字であれば、読み方が分からなくてもスルーです。上記「ひぐれざと」のように漢字にとりあえずの読みを当てて、読めればそれで本人的には満足なんです。麻生総理も多分その感覚をお持ちかと思います。そのほかの記事とかで「音読みと訓読みを組み合わせて読む言葉はあまりないのに…」といった記述がありましたが、我々のように漢字を読むのが苦手な人種は、そんな音読みとか訓読みなんてあまり気にしていません。読めるようにつなげて読むだけなんです。だから踏襲を「ふしゅう」と読めるんでしょう。〔中略〕 なんでみんな漢字が普通に読めるのかしらね、麻生総理…。 ◆ 日暮里(にっぽり)を「ひぐれざと」と読むのは、たんに東京の地理に疎いというだけで、漢字の読み方としては間違いだとはいえないだろう。ワタシにも日暮里を「ひぐれさと」と呼んだ同僚がいたことをなつかしく思い出しながら、「漢字にとりあえずの読みを当てて、読めればそれで本人的には満足」、「読めるようにつなげて読むだけ」というすいぶんとすなおな自己分析を読むと、なるほどそういうことなのかもしれないなあ、とかなり納得をした。 |
◆ エチオピアには塩コーヒーがあるらしい。 ◇ 見ていたらモカの香りが風に乗ってやってきた。
◇ 塩キャラメルコーヒー!! 塩なんだかキャラメルなんだかコーヒーなんだか良く分から無いよね~~・・・。 ◆ ジョージアの缶コーヒーなんだけど。キャラメルの味がして、塩の味がして、それからコーヒーの味もする。そんな感じで、けっこういける。まだ販売してるのだろうか? ◆ 明治天皇も塩コーヒーを飲んだことがあるらしい(《月に叢雲花に風:明治天皇と塩コーヒー事件》) ◇ 日本では英国風にコーヒーはミルクと砂糖を入れた状態で給仕されるが、この日は誤って砂糖の代わりに塩が入れられていた。明治天皇は一口ごくりと飲み、顔をしかめた。天皇はさらにもう一度口をつけた後、憤然として席を立ったため、散会となった。 ◆ どうやらお気に召さなかったらしい。あと、塩コーヒーダイエットなんてのもあるらしいが、どうでもいい。 |
◆ 《Yahoo!知恵袋》にこんな質問。 ◇ コーヒーにバター?? 友達の家に遊びに入ったら、コーヒーを作ってくれました。コーヒーに砂糖とミルクを入れるのは普通ですが、その後にバターも入れてました。そういう飲み方も一般的にあるのですか?? 私は初めてだったので驚きました。皆さんのお宅ではコーヒーにバターは入れてますか? ◆ ベストアンサーに選ばれた回答がこれ。 ◇ 辺見庸さんの「もの食うひとびと」によると、インドネシアだったかコーヒーの産地ではコーヒーに砂糖がいいかバターがいいか尋ねられるそうです。私はまだやったことありませんが、これを機会に一度試してみます。 ◆ インドネシアではなくエチアピア。「砂糖かバターか」ではなく「塩かバターか」。以下、『もの食うひとびと』の当該箇所の引用。 ◇ 〔……〕 近くの食堂「ムスラク」に入って本場もののコーヒーを注文してみた。 ◆ これと同様のコーヒー・セレモニーの体験記が《EarthTribe:コーヒーセレモニー》でもステキな写真入りで読める。花や線香はなかったようだが。 |
◇ 熱心な教師がいる。何事も疑問を持つところから学ぶことは始まる。一つでも二つでもよいから、毎日、なにか疑問を考えてくるように……。そんな宿題を出された。 ◆ じっさいのところ、イカとタコが結婚すると、生まれた子(イカタコ? タコイカ?)の足は何本になるのだろうか? いや、じっさいには、イカとタコはあんまり仲がよくなくて、結婚などしないのかもしれないが、むりやり結婚させるとすると、何本足の子どもが生まれるのだろうか? まんなかをとって、9本だろうか? それとも、どちらが父親かで違ってきて、8本ないしは10本になるのだろうか? 小学生でもないのに、そんなことを考えてみたのは、奇数の9本というのは、なんだかバランスが悪そうな気がしたからで。足が左右に生えているなら、右も左も同じ本数のほうが動きやすいだろう。けれど、イカとかタコの足はどのように生えているのだったっけ? 左右はあんまり関係ないんだったっけ? よくよく考えてみると、イカのこともタコのことも、なんにも知らずにただ食べていただけなのだった。今度、函館に行く予定だから、じっくり観察してみることにしよう。夏休みのいい宿題だ。函館にはバターコーヒーを出す喫茶店もあるそうだ。 |
◆ 夏といえば、怪談である。妖怪である。一つ目小僧であり、三つ目小僧である。二つ目の小僧は妖怪ではない。たんなる人間である。 ![]() ![]()
◆ こんなハナシをしても、いっこうに涼しくならない。では、クモの目はどうだろう。 ◇ 眼だ眼だ。おそろしい蜘蛛の眼だ。 ◇ There have been a lot of movies with giant spiders in them. One of the things that makes them look so creepy is all those eyes they have. But is that just something from the imagination of Hollywood? ◆ How many eyes does a spider have? クモの目、いくつあるか知ってる? ◇ 蜘蛛には、いくつ目がありますか? 私は、二つと思ってるんですが・・・ ◇ 理科の時間に習ったような気もしますが、すっかり忘れてしまい(笑) 恥ずかしながら、ずっと、2個だと思っていました^^; ◆ 答えは8個。なかには、6個のも4個のも2個のも0個のものもいるらしいから油断がならない。あるサイトには、 ◇ It gets easier to count the eyes when the spider isn't so hairy. This flower spider (Diaea variabilis) is a good example.
◇ うーん、しかし実にどうも、何か変な感じですね。昆虫と比べても、より「マシーン」というか、異質なものを感じます。 ◆ そんな気もする。やっぱり暑い。 |
◆ 辺見庸の『もの食う人びと』から。元従軍慰安婦の金さんは、「当時の味で記憶しているのは?」と聞かれ、 ◇ 連行の途中、大阪の屋台で食べた「かけウドン」と彼女は答えた。 ◆ それで、うどんが食べたくなった。関西のうどん。 ◇ その味を言うならば一体に関西の食べものは淡味ということになっていて、それならばうどんの汁も淡味だから旨いのだということになりそうであるが関西のうどんはうどんそのものが淡味のせいでうどん粉臭いのとは反対に何かあの白玉というものをうどんの形に仲ばしたものを食べている感じがする。〔中略〕
◆ 以下、おまけ。《青空文庫》で見つけた林芙美子の小説から。 ◇ 絹子は信一をいいひとだと思つてゐる。何かいい話をしなければならないと思つた。さうして心のなかには色々な事を考へるのだけれども、何を話してよいのか、少しも話題がまとまらない。 |
◇ 世界をできるだけ単純な公式に還元しようとする宇宙論や哲学あるいは数学と、キノコにはまだ未知の種類が数千種もあるという、世界の多様性に喜びを見出す博物学と、学問にも両極があることを知ったのは、学生時代であった。 ◆ 両極端な「火星人」と「金星人」。その属性をさまざまな用語で言い表すことができるだろうが、たとえば、抽象的と具体的。 ◇ あなたの話は具体的なのでわかりにくい。もっと抽象的に話してください。 ◆ と言った数学者(吉田耕作)もいるらしい。「火星人」的発言の最たるものだろう。逆に、オタクと呼ばれるひとたちはみな、その対象がなんであれ、「金星人」的素質があるだろう。かれらはみな、一般的なもの、共通したもの、平均的なもの、法則的なもの、論理的なもの、といったものよりも、例外的なもの、独自なもの、突出したもの、差異のあるもの、非論理的なもの、といったものの方を好むのである。たとえば、虫を好きな理由を聞かれた養老孟司は、 ◇ 論理が立たないことがたくさんある所が好き。要は、わけが分からないから好きなのです。 ◆ と答えている。「火星人」と「金星人」の中間でほどよいバランスを保っているのが、「地球人」ということになるが、では、「土星人」はどこに位置するだろうか? たぶん、「火星人」からは遠い。「金星人」からも遠い。さらには、「地球人」からも遠く離れて、宇宙にひとり。さみしくはないか? |
◆ 甲子園が終わると、気が抜けたように涼しくなった。夏も終わりだろうか? 64年前の夏のことを、なかにし礼が自伝的エッセーで書いている。 ◇ ソ連軍数十機が満州牡丹江(ぼたんこう)を爆撃したのは、昭和二十年八月十一日の午前十時であった。 ◇ 八月十五日、無蓋車から見上げるハルビンの正午の空は絵の具を塗ったように真っ青であった。 ◆ 1945年8月11日、牡丹江、快晴。1945年8月15日、ハルビン、快晴。8月15日、この日は、日本も快晴だった。そのことを、「青空の記憶」でちょっと書いた。 ◆ ローセキ(蝋石)のことも「道路の落書き」でちょっと書いた。 ![]() ![]() ◆ のらくろのこととハルビン(哈爾濱)のことは、まだ書いてない。そういえば、無蓋車(屋根のない貨物車)もつい先日、久しぶりに見た。写真を撮っておけばよかった。 ◆ 読むのが遅い。1ページにも満たない文章を読むのに、ずいぶんと時間がかかる。ゆっくりとしか読めない。 |
◇ 父はそれっきり危篤状態に入ってしまった。 ◇ 私の少年時代、小樽の赤岩の近くに住んでいたことがあり、夏休みといえば、よく赤岩の海岸にでかけたものだ。海水浴より、アワビやウニという、海の獲物が中心であった。 ◆ なかにし礼は1938(昭和13)年生まれで、姉は7つ年上。達本外喜治(たつもとときじ)は、1913(大正2)年生まれで、姉は5つ年上。白いお尻と大きなお尻。 ◆ ワタシにも姉がいるが、とくに書くべき思い出はない。 |