MEMORANDUM

  イカとタコ

◇  熱心な教師がいる。何事も疑問を持つところから学ぶことは始まる。一つでも二つでもよいから、毎日、なにか疑問を考えてくるように……。そんな宿題を出された。
 少年は考える。真剣に考えたが何も思い浮かばない。先生の熱心さを思うと、どうにもつらくて学校を休んでしまう。そして考えた。
 ようやく一つの疑問が頭に浮かぶ。少年は意気揚々と学校に行って、それを告げた。
「イカとタコが結婚すると、その生まれた子の足は何本でしょう」
 先生は子どもにばかにされたと思って腹を立てる。少年は首筋をつかまれ、うす暗い理科準備室に、標本の骸骨といっしょに立たされる。
 反省しろ、という教師のことばを、少年は懸命に考え、そして思った。
(先生が怒ったのは、ぼくが小学生なのに、結婚ということばを使ったからだ。きっと、そうに違いない)
 岩本敏男さんの『赤い風船』という作品に出てくる話だ。

灰谷健次郎 『アメリカ嫌い』(朝日新聞社,p.63-64)

◆ じっさいのところ、イカとタコが結婚すると、生まれた子(イカタコ? タコイカ?)の足は何本になるのだろうか? いや、じっさいには、イカとタコはあんまり仲がよくなくて、結婚などしないのかもしれないが、むりやり結婚させるとすると、何本足の子どもが生まれるのだろうか? まんなかをとって、9本だろうか? それとも、どちらが父親かで違ってきて、8本ないしは10本になるのだろうか? 小学生でもないのに、そんなことを考えてみたのは、奇数の9本というのは、なんだかバランスが悪そうな気がしたからで。足が左右に生えているなら、右も左も同じ本数のほうが動きやすいだろう。けれど、イカとかタコの足はどのように生えているのだったっけ? 左右はあんまり関係ないんだったっけ? よくよく考えてみると、イカのこともタコのことも、なんにも知らずにただ食べていただけなのだった。今度、函館に行く予定だから、じっくり観察してみることにしよう。夏休みのいい宿題だ。函館にはバターコーヒーを出す喫茶店もあるそうだ。

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