MEMORANDUM

  食害する

◆ さいきん、虫のことをあれこれ調べるようになって、はじめて「食害する」というコトバがあるのを知った。たとえば、「柚子坊」をネット辞書で引くと、『大辞林』では「ユズやカラタチなどミカン科植物を食害し」とあり、『大辞泉』では「ユズ・カラタチなどの葉を食べて育ち」とある。園芸に縁のないワタシなどには、『大辞泉』の表現のほうが中立的で好ましいように思えるけれども、趣味であれ仕事であれ、じっさいにユズやカラタチなどを育てているひとには、「食害する」というのがまっさきに思い浮かぶ最適なコトバなのだろう。

◆ さいきん、身近な虫をあれこれ写真に撮っていて、その虫について調べるたびに、「~を食害する」などと書かれていて、ちょっと気がめいる。

◆ たとえば、クロウリハムシ。

◇ ウリ類の害虫で、とくにヘチマの花を好んで食害する。幼虫は根を加害するが、ウリハムシに比べて数は少ない。
『日本農業害虫大事典』(梅谷献二・岡田利承 編,全国農村教育協会,p.221)

〔昆虫エクスプローラ〕 カラスウリ類の葉を好んで食べ、他にダイズ、エノキ、シソなども食べる。幼虫は地中にいて、ウリ類の根を食べて育つ。
www.insects.jp/kon-hamusikurouri.htm

◆ たとえば、アオドウガネ。

〔昆虫エクスプローラ〕 成虫は、いろいろな植物の葉を食害する。灯火にもよく飛んでくる。幼虫は、地中で植物の根などを食べて育つ。
www.insects.jp/kon-koganeaodougane.htm

〔キッズgoo:図鑑〕 幼虫は植物の根を食べ、成虫も、葉っぱがぼろぼろになるまで食べつくすので、農家や園芸家などから害虫とされている。
kids.goo.ne.jp/zukan/infozukan.php?category=5&id=8

◆ どちらの例も、ひとつめの引用が「食害する」というコトバを用い、ふたつめの引用が「食べる」というコトバを用いている。クロウリハムシもアオドウガネも、好物の植物を食べた結果、「害虫」と呼ばれるわけで、それは仕方のないことだが、「食べる」を「食害する」と表現するのは、どうだろう? 虫の立場と人間の立場が混交していて、ちょっとわかりづらい。食べられた結果を食害というのは気にならないが、それに「する」をつけると、アタマがちょっとねじれる。アタマがねじれることなくすんなり理解できるのは、最後の《キッズgoo》の文章。

◆ とはいえ、「食害」はもともとは「蝕害」と書いたようで、それならしっくりくるかも。そういえば、「蝕む」は「虫食む」だったなのだなあ。

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