MEMORANDUM

  尾道の坂道

〔『週刊朝日』2012年6月22日号:大林宣彦〕 僕が尾道で撮った「尾道三部作」は大勢の人に愛してもらえて、多くの人が尾道を訪れてくれました。しかし地元の行政関係者の間では、「大林は尾道の発展を30年遅らせたアホ監督だ」と言われています。僕は町をこのまま残してほしいという気持ちで、崩れた土塀やひび割れた瓦屋根や、歩きにくい山道ばかりを撮った。行政にすれば、尾道の恥ばかりを、日本のみならず世界にもさらしたというわけです。
www.wa-dan.com/article/2012/06/30.php

◆ そういえば、尾道には行ったことがない。あれこれ考えるのは、行ってみてからにしたいが、とりあえず行く予定はないので、下調べがてらネットを見ていると、《尾道空き家再生プロジェクト》というのを見つけた。

◇ 瀬戸内海のおだやかな海と山々に囲まれた街、尾道。尾道固有の町並みや建物はそこで営まれてきた暮らしの歴史であり文化です。その中でも特にユニークな環境をもつ山手地区ですが、現在、空洞化と高齢化が進み、空き家が数多く存在しています。その中には建築的価値が高いもの、不思議で個性的なもの、景観が優れているもの等さまざまな魅力をもったものも含まれていますが、残念ながら住人を失った家々の傷みは年々加速しています。尾道空き家再生プロジェクトではそれらの空き家を再生し、新たな活用を模索していきます。この活動を通じてほかにはない尾道らしいまちづくりを展開していきたいと思います。
www.onomichisaisei.com/about.php

◆ 山手地区の「不思議で個性的な」建築には、「ガウディハウス」なんてもあるらしい(画像も同サイトより)。

◆ ついでに、思いつきで、ふたたび岡村孝子の「夢をあきらめないで」の一行。

♪ 乾いた空に続く坂道 後ろ姿が小さくなる
  岡村孝子「夢をあきらめないで」(作詞・作曲:岡村孝子,1987)

◆ 尾道も坂の町である。ということで、この「坂道」の情景が尾道の山手地区であるとするなら、どうだろう。ここで歌われている「坂道」は「乾いた空に続」いているのであるから、上り坂ということになる。後ろ姿の「あなた」は、坂を上って遠ざかっていくわけだろう。駅に行くには坂を下らなければならない。坂を上ってどこへ行くのか? 坂の上に実家があるのかもしれないが、それでは夢をあきらめてしまったひとのハナシになりそうだ。あるいは、山を越えて、反対側の町に出るつもりか? 「熱く生きる瞳」の持ち主である「あなた」なら、それぐらいのことはやりかねないかもしれないが、情景設定としては特殊すぎるだろう。それに、尾道の山手地区の坂道は狭く曲がりくねっているのが多そうだから、「乾いた空に続」くような広々とした坂道自体がないような気もする。というわけで、この歌の「坂道」は尾道の山手地区には存在しないだろうな、と思った次第。いつか、じっさいに尾道に行って坂道を歩けば、そのときに、また思いだすだろうと思う。

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