◆ 「It thunders. イータ サンダス それ かみなる」「It thunders. イータ サンダス それ かみなる」、ジョン万次郎の訳した英会話の教科書(『英米対話捷径』)のコトバを舌の上で転がしていたら、つられて転がり出てきたコトバがある。You're rollin' thunder, ah! この「ah!」の部分(歌詞カードには書かれていないが)をカラオケで楽しく真似るのが好きなひともたぶん多いだろう。なつかしいアリスの「冬の稲妻」だ、ah!(夏なのに)。
♪ You're Rollin' Thunder 突然すぎた
You're Rollin' Thunder 別れの言葉
アリス「冬の稲妻」(作詞:谷村新司,作曲:堀内孝雄,1977)
◆ この "rolling thunder" は、ゴロゴロと「転がる雷鳴」ではなくて、ゴロゴロと「轟(とどろ)く雷鳴」。もしかしたら、転がるゴロゴロも轟くゴロゴロも、もとはひとつのゴロゴロに由来するのかもしれないが、そのへんは調べてないのでなんともいえない。それはとのかく、Ah! いま気がついた。歌いだしの「あたなは稲妻のように」は、直訳すれば、"as if you were a lightning bolt" か。すくなくとも、"rolling thunder" ではない。稲妻は雷鳴ではない。なにもいまごろ気づくようなことではなかった、ah!。
◇ 英語で言うと稲妻は『lightning』で雷は『thunder』になるようです。ですから、正確に言えば冬の稲妻な訳ですから歌詞は『You're Rollin' Lightning』になるのでしょうか?何だか迫力がない歌になってしまいますね。
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◆ 稲妻はゴロゴロしないと思うが、ゴロゴロとまたべつな歌が転がってきた。ユーミンの軽快な曲、「稲妻の少女」。
♪ She's a lightning lightning Lightning Bolt.
松任谷由実「稲妻の少女」(作詞・作曲:松任谷由実,1979)
◆ こんどはちゃんと夏の曲。"Lightning Bolt" は稲妻だけれども、これはサーフィンの歌だから、とうぜん、サーフボードのブランドの「Lightning Bolt」が意識されているわけで、
♪ 白いしぶきが雲ならば hum
あの娘のボードは閃く稲妻
◆ と歌詞にもある(この「hum」を「冬の稲妻」の「ah!」と比較してみるのもおもしろいかも)。ワタシも「Lightning Bolt」のサーフボードをもって海水パンツをはいて、湘南は遠いので近くの琵琶湖で泳いだものだった。
◆ とあれこれ書きつつも、よくわかっていないのが、日本語の「雷」。これは音(雷鳴)と光(稲妻)を合わせたコトバという理解でいいのだろうか。
◇ かみ‐なり【雷】 《「神鳴り」の意》 1 電気を帯びた雲と雲との間、あるいは雲と地表との間に起こる放電現象。電光が見え、雷鳴が聞こえる。一般に強い風と雨を伴う。いかずち。なるかみ。「―が鳴る」「―に打たれる」《季 夏》「―に小屋は焼かれて瓜の花/蕪村」
小学館『大辞泉』
◆ それでいいようだ。《気象庁》の「予報用語集」によると、「雷」とは「雷電(雷鳴および電光)がある状態」で「電光のみは含まない」とあり、「用例」として、
◇雷が発生する。雷が鳴る。落雷。
www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kori.html
◆ が挙げられている。つまり、気象庁の天気予報では、「雷が(光をともなわずに)鳴る」ことはあっても、「雷が(音をともなわずに)光る」ことはない。一般的に考えても、雷の語源は「神鳴り」だから、どちらかというと、光よりは音のほうが重要な要素なのだろう。どうしてこんなことが気になるのかというと、英語のことを考えてしまったからで、日本語の「雷」を" thunder" と訳すと、これは音のことであって光は含まれない。だから、正確に訳そうとすると、"thunder and lightninng" ということになって、ちょっと面倒だなと思ったわけ。"thunder" と "lightninng" をひとつにしたコトバはないのかというと、あるにはあって、"thunderbolt" がそうかもしれない。
◇ thunder は「雷鳴」のみを意味し, 「稲光」lightning とは別. a thunderbolt は音と光の双方を伴う.
研究社『新和英中辞典』
◆ と、とりあえずはそういうことになるのかもしれないが、この先は面倒なので、まだいずれ。