♪ エンジン・フードで卵が焼けるほど ◆ 先に引用したユーミンの「稲妻の少女」(じつはタイトルをいましがた知ったばかりだ)の歌詞について、とんでもない思い違いをしていたことに気がついたので、そのハナシ。歌われる「あの娘」はサーファーで、台風の接近にともなうビッグウェイブを逃してはなるものかと、車をとばして浜辺に駆けつける。「エンジン・フードで卵が焼けるほど」という部分がなんとも秀逸だ。 ◆ それから、「あの娘」は、自慢の「Lightning Bolt」の稲妻マークのはいったボードを自在に操ってサーフィンを楽しむことになるのだが、以下サーフィン用語が頻出するので、じつのところ、よく理解していなかった。たとえば、 ♪ 今日をのがしたらお目にかかれない ◆ の「チューブ」。ネット上でサーフィン用語集もいくつか見ることができるが、そのひとつ《サーフィン用語大辞典(namidas)》によれば、 ◇ tube 波が巻いている状態。(歌のTUBEはサーファーではないそうだ) ◆ と書いてあって、なるほど、「夏をのがしたらお目にかかれない」バンドとして有名な「TUBE」の由来は、これだったのか。あるいは、 ♪ 今日をのがしたらお目にかかれない ◆ の「カット・バック」。《サーフィン用語百科事典》によれば、 ◇ テイクオフを覚えて、ボトムターン~トップターンが出来るようになってきたらこの”カットバック”に挑戦したい!という流れになってくるでしょうか。”切替す”という意味合いを持つ言葉どおり、ライディングの途中に切替すことで波のパワーゾーンに戻る”鋭角のターン”をいいます。 ◆ なるほど。わかったようなわからないような。また、あるいは、 ♪ コーラの空びん並べるみたいにさ ◆ の「スラローム」。《サーフィン基礎知識(波通)》によると、 ◇ すらろーむ【スラローム slalom】 カーブを入れながら、連発ターンをしまくること。 ◆ なるほど、そうか「しまくる」のか。これだ、ワタシがカン違いしていたのは。30年もの長きにわたって、ワタシはこの「スラローム」を、どうしたわけだか、「スワローにする」だと思っていたのだった。 ◆ 解説しよう、「スワローにする」とはなんなのか? 「スワロー」は英語の "swallow" で、「燕(つばめ)」のことだ。ツバメは、「スズメ目ツバメ科の鳥」であるのはもちろんだが、俗語として、 ◇ 2 年上の女性にかわいがられる若い男。「若い―」 ◆ の意味もある。たぶん、この歌を聞いたころ、どこかで「若いツバメ」というコトバを聞きかじっていたのだろう。てっきり、歌の「あの娘」は「コーラの空びん並べるみたい」に次々と若い男を「ツバメ」に「しまくって」いたのかと思ってしまったのだった。「ツバメ」では露骨すぎて下品だから、英語にして「スワロー」にしたのかと。われながら、実にすばらしい解釈だった。ちなみに、「若いツバメ」というコトバの由来は平塚雷鳥(の5つ年下の奥村博史という愛人)にあるそうで、《Wikipedia》によれば、 ◇ 「相手の女性よりも年下の恋人」をつばめと呼ぶのは、奥村がらいてうと別れることを決意した際の手紙の一節、「静かな水鳥たちが仲良く遊んでいるところへ一羽のツバメが飛んできて平和を乱してしまった。若いツバメは池の平和のために飛び去っていく」を、らいてうが『青鞜』上で発表し、一種の流行語になったことに由来する。 ◆ なるほど、いい勉強になった。 ◆ 「稲妻の少女」はアルバム『OLIVE』に収録されているが、このなかには、そういえば、「ツバメのように」という曲もあった。これは飛び降り自殺した女性のことを歌ったもので、「若いツバメ」とはなんの関係もない。 ♪ 誰かが言った あまり美人じゃないと ◆ 30年前、この箇所の「リアルさ」には衝撃を受けた。救急車のことを「哀しいリムジン」と表現するのもユーミンらしいセンス。 ◆ せっかくの機会だから、『OLIVE』の他の曲の歌詞もざっと読んでみたところ、「スラローム」以外にもカン違いして箇所がいくつかあった。あと、「稲妻の少女」に戻って、ひとつだけ。 ◇ 〔2ch〕 あとこのOLIVEの中に入ってる、稲妻の少女の歌詞でも一箇所おかしい所がある。それは、バレーのようなカットバックにってところが。これもバレエだと思うんだわ、あたしは。バレーだとバレーボールになっちゃうwww ここ絶対、バレエだとおもう。 ◆ 歌詞ひとつとってみても、ずいぶんむずかしくて、キリがない。 |
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