MEMORANDUM

  お前はどこへ行くのだ

◆ 電車のなかで本を読むと、こんなこともある。

◇ やっと交番から逃れて切符を買ってる時、お前はどこへ行くのだ、僕はとよ四季と云う所にかじ屋があるので、其処へ働きに行くんですと云ったらば、駅の人が、柏で降りて、野田線に乗りかえるんだと云って、野田線からとよ四季へ行かれると云われました。「夕飯はまだ食べてないのか。よし腹がへってるだろう」袋そっくりせんべいを貰って僕は記者の中で食べました。とよ四季でかじ屋へ行く道がわからないので、やっと教えて貰って行って見れば違うかじやで、方々聞いてもわからないので、仕方がないからこの辺で使って貰おうと思っても、誰も使う人は居ないのでした。「とよ四季じゃ人を使う家は無いから、柏へ行って使って貰えよ」と云われて駅へ行ったら、駅の人に、「お前はどこへ行くのだ」と聞かれたので、僕はその通り話をして、金は持って居ないので、ただ切符を貰って有りがたく思いました。(昭和十六年・十九歳)
池内紀編 『山下清の放浪日記』(五月書房,p.30)

◆ 野田線。この文章を読んだのが、たまたま東武野田線の電車のなかだった。

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