MEMORANDUM
2004年06月


◆ 気をつけねばならぬ。「こんにちは(hello)」という何気ない挨拶のなかにさえ、地獄(hell)はあるのだから。

◆ などと書いてはみたが、やはり三好達治の「郷愁」(『測量船』)の一節には遠くかなわない。

◇ 海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。

◆ プラス思考という言葉がわからない。もしかしたら、positive thinking の訳語なのかもしれないが、だとしても、なぜ positive が「プラス」と翻訳されるのかがわからない。

◆ プラスとは「+」であり、マイナスとは「-」であって、これは「足す」ということであり、「引く」ということである。ひょっとして、足し算は引き算よりも positive なのだろうか。

◆ ワタシは増やすことよりも減らすことに関心がある。そんなわけで部屋にはエアコンがない。テレビもない。元気もない?

◆ 引越屋をしていると、ときどき自分がチャップリンにでもなった気がするときがある。たとえば。太った客が、美容あるいは健康のためにと、安くはない額で購入したが、三日坊主で止めてしまって、ホコリが雪のように堆積している、重い健康器具を持ち上げて運んでいるとき。ワタシが健康になってどうする。しかも本来の用途とは違ったかたちで。

◆ フィットネスクラブといった類の空間はなぜだかガラス張りになっているところが多いが、外からエアロバイクを漕いでいるひとやウォーキングマシンで歩いているひとを見ると、単純に滑稽な気がする。動物園でサル山のサルを見ている感じがする。そんなことに高い金を払うぐらいなら、引越屋でバイトをしたほうがいい。健康になって、金までもらえる。ただし、プールはない。

10日ほど旅行してくるので、そのあいだ更新はありません。

◆ 十日ほどの旅行を終えて、夕刻ウチにたどり着いた。ほんとは昼ごろ成田に着いたので、そのまま帰れば、三時にはウチにいることもできたのだが、ウチに急いで帰ったところで、だれか待つひとがいるわけでもないので、旅の終わりの余韻を味わうというわけでもないけれど、少々寄り道をして帰った。

◆ アパートの玄関のカギを開けるまでは、旅は終わらない。そう信じたい気持ちで、少しでもゆっくりとウチに向かう。玄関の前に着いてもまだ考えている。もしかすると部屋のカギを失くしたかもしれない。そうなら、踵を返してまた旅にでれるのではないか? だが、部屋のカギは財布のなかに苦もなく見つかった。

◆ ほんとうのところ、旅はいつ終わるのだろう。帰り道へと一歩踏み出したとき、もう旅は終わっているのかもしれない。

◇ 旅の終わりであれば、もどらなくてはならず、となると、たとえまだ旅のさなかであれ、厳密にはもはや旅ではない。「旅」そのものは、すでに終了している。そのせいか、仲間と一緒のときでも、誰もがたいてい無口である。
池内紀 『ひとり旅は楽し』 (中公新書,p.200)

◆ 今回の旅行にこの本を持っていった。旅には旅の本がいい。

◆ 3年の恋愛をしたら3年の、5年の恋愛をしたら5年の月日がかかると思っていたことがあった。それをゆっくりと忘れるための時間。なつかしく忘れるための時間。そう信じていたい時期があった。いまでは、そんなばかげたことも考えなくなったけれど、そんなことを思い出したのは、旅をしたからだ。旅から帰って、そのことを忘れるにも、時間が必要なのではないか。10日の旅には10日の。ゆっくりと日常に戻るための時間。旅の記憶を整理するための時間。

◆ 旅と恋愛は似ているだろうか。どちらにも必ずピークというものがあって、山登りでもピークを踏んであとは下りるだけになって、ときどきうしろを振り返りながら、遠ざかる風景。それもまんざら悪いものでもない。

◆ そんなことを考えると終わらない。明日からまた仕事。

◆ めぐりめぐってたどりついた相田くひをというひとのサイトに、こんなことが書いてあった。

◇ 猫おばさん どこの町にもいるだろう。野良猫たちにエサをあげている猫ボランティアの中年女性だ。月刊誌「猫の手帖」には平成猫バカ列伝という実質猫おばさん紹介ページがあり、猫のために猫専用家を築てただ、数十キロ離れた某大学構内にカートン買いした猫缶をストックし毎日エサやりに来るだ、猫30匹飼って離婚しただ・・・尋常ならざるあまりの猫バカぶりに感動すら覚えるのだが、猫の手帖を2年も定期購読していると、おのずと猫おばさんには独特の顔があることに気付く。実際、家の近所や会社の近くで見かける猫おばさんも、不思議なことにまったく同じような顔つきなのだ。
www004.upp.so-net.ne.jp/kuhiwo/index.html

◆ 月刊誌「猫の手帖」なんてのがあるのだな。見るのがコワイ。鳩おばさんのための「鳩の手帖」はあるのだろうか。ないだろうな。

◆ そういえば、スリランカの印象の最初は、野良犬だった。自由な犬たちの動きに面食らい、とまどいをおぼえ、遅れて、日本には野良犬がいないのだった、と気がついた。

◆ 昨夜、「あちこち 足跡つけまくってるんだね」というタイトルで GOO BBS に書き込みがありましたが、不愉快なので、削除しました。

◇ From Bobo at 2004 06/24 22:22 編集 返信
gaiax系の無料HP、相変わらず盛況だね
おいらも数年前に養護学校の子どもたちと作ってたんだけど
結局 変な言いがかりつけられて削除されちまったぜ
NTTもまともな対応ができないんだよな
クレームは一切受け付けないんだから
わけのわかんねぇやつが運用してるしさぁ
そんなことやってると 学校現場から干しちまうぞ!

◆ 「学校現場から干しちまうぞ!」って、だれに云ってるのでしょう? 内容がよく理解できないので、コメントのしようがありません。連絡先も書いてないので、コミュニケーションの取りようもありません。これはなんなのでしょうか?

◆ ただ、「あちこち 足跡つけまくってるんだね」というタイトルの部分には若干云いたいこともあって、そういえば、以前 Guestbook にも、

◇ No.135 Passenger [URL] 202004/05/07(Fri) 21:21
忙しい中、Logつけありがとうございます、でも、迷惑でもあります・・・

◆ という書きこみがありました(この方も URL がデタラメだったので、返事のしようがありませんでした)。このふたつの書き込みの底にはには共通する部分もあるように思えるので、まとめて考えると、「あちこちに足跡を残すような行為はイケナイことである」と主張しているようでもあります。
 なるほど、ワタシは時に「あちこちに足跡につけまく」ることもありますが、それが迷惑である理由がよくわかりません。ほかの方がどのような意図で、自分のホームページを作られているのかはわかりませんが、ワタシとしては、公開する以上はより多くのひとに見てもらいたいと思っており、そして、そのためには(多少の)宣伝広告も必要だと考えています。
 誤解があるようですが、たとえば、タブ式のブラウザーを使えば、やろうと思えば(やりませんが)、300のサイトに足跡を残すのに、10秒とかかりません(もちろんパソコンの性能や回線状況にもよります)。「忙しい中」と書かれた方は、サイトをひとつひとつしらみつぶしにクリックしまくっている様子を想像されているようでもありますが、そんな必要はないのです。

◆ それにしても、たった一行の「足跡」がそんなに迷惑に思えるものなのでしょうか? アクセスが多ければあっと云う間に消えてしまいますし、どうしてもイヤだというなら、アクセス拒否をされてはいかがでしょう。
 また、「足跡(ログ)」のページというものは、そのサイトの管理人以外、あまり見る必要も機会もないと思うのですが、書き込みされた方は、なんの必要があって、あちこちのログを見まくっていらっしゃったのでしょうか? わからないことばかりです。

◆ 先に引用した書き込みからしばらくして、「ログからきました」という方の書き込みがありました。その方もスリランカに行ったことがあるそうで、こういう出会いこそ、ワタシは大切にしたいと思っています。少々感情的になったかもしれません。削除すべきは、この文章の方かもしれませんね。

◆ コンビニはキライなのだが、いつも利用している。昨日、弁当のようなものを買ったら、若い男性の店員が、「お箸は一膳でよろしいですか」と云った。そうだった、箸は一膳、そして箪笥は一棹と数えるのだった。

◆ 今日の昼食はインド料理店のランチだった。カレーを手で食べた(くなった)。手を使うと無駄がない。紙もいらない。

◆ 森山直太郎の「生きとし生けるものへ」という歌が流行っているのかいないのか、とにかくキライである。スリランカ航空の機内で聞いた。

◆ スリランカ航空の略号は UL で、これは「Usually Late」の略だとか。いや、これはエアランカ時代の話だった。

◆ 携帯電話はかなりキライである。とにかく銭湯の脱衣所で話すのはやめてほしい。

◆ なにか書きたいことを思いついて、すぐに忘れてしまった。いろいろ書いているうちに思い出すかと思ったが、まだ思い出さない。

◆ ヌワラエリアの郊外に、バスが止まっていた。ワタシにはなじみのある塗装色。どうみても京都の市バス。京都の市バスを京都で見てもなんということはないけれど、スリランカで京都の市バスを見るのは妙な気分がする。表示をみると、RAJARATA UNIVERCITY OF SRI LANKA とあって、どうやら大学のバスのようだ。中にはいると、路線図などもそのままで、ますます妙な気分がした。

◆ こんな 「たまたま」 は不思議と呼びたい。ワタシは京都生まれだったから。そうして、旅先で知り合って、このバスを一緒に見た女の子も京都のひとだったから。なんだか、できすぎた話、ではある。

06/18/2004◆ ここはヒッカドゥワというところ。スリランカでもっとも名の知れたビーチリゾート。だけど、だれもいない。6月は雨季で、オフシーズン。モンスーンで荒れた海。

◆ なぜだかジャームッシュの映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の一場面を思い出す。真冬のエリー湖。何も見えない。だれもいない。

06/18/2004◆ ヒッカドゥワで泊まったのは「PARADISO HOTEL」。ほかにはだれもいない。ワタシは Stranger in Paradise。天国ホテルで極楽極楽。