MEMORANDUM

  ロバの馬車

◇ ぼくは中国大陸の旅の最後に、北朝鮮との国境にある小さな町、集安へと出かけた。〔中略〕 道路にはタクシーがわりの自転車式リクシャやオートバイを改造したリクシャ、さらにロバの馬車も行き交っている。通りの看板には漢字に混じってハングル文字が見える。
斉藤政喜『東方検便録』(文春文庫,p.65-66)

◆ リクシャを知らないひとは調べてもらうことにして、この文章で気になったのは「ロバの馬車」。日本でロバの馬車というと、やはりロバのパン屋ということになるだろうか?

◇ ロバのパン屋をご存知でしょうか。 私は話には聞いているのですが、本物は見たことがありません。友達によると昔、本物のロバが馬車(ロバが引くのに馬車とは変な感じですが、ロバの引くのはなんと言うのでしょう)を引いてパンを売りにきたそうです。
www.eonet.ne.jp/~nanno/pagenikki0003.html

◆ 世界を回れば、まだあちこちにロバの馬車が走っていることだろう。

◇ キルギスの田舎ではまだまだ馬車が活躍! 荷物載ってないときは気軽にヒッチハイクして載せてもらえます! ちなみにこいつは馬じゃなくてロバです。
kyrgyzstan.blog24.fc2.com/blog-entry-19.html

◆ たとえば、西アフリカのブルキナファソ。

◇ ここ第4の都市ワイグヤにはタクシーが無い。タクシーの変わりとしては子供が引いているロバ馬車(ロバにリアカーのようなものを付けたもの)である。
www.pref.fukushima.jp/kokusai/wwt/burkina/kurobane/burkina_3.html

◆ たとえば、インドネシアのロンボク島。

◇ 一番大きな違いは、ロバの馬車(変な言い方)が残っていて、普通に カポカポと、街の中を走り回っているトコです。
www.geocities.co.jp/SilkRoad-Desert/9420/Data/indonesia/bali3.htm

◆ 「ロバの馬車」あるいは「ロバ馬車」という言い方になにか違和感を感じるひとは、「ロバ車」と表現するかもしれない。ドイツのネッセンドルフ(Nessendorf)という町には、「ロバ・パーク(Eselpark)」があるらしい。

◇ ですが、何と言ってもロバ・パーク一番の目玉は、乗馬ならぬ「乗ロバ」とロバが引く「ロバ車」でしょう。
www.newsdigest.de/newsde/regions/reporter/kiel/3605-864.html

◇ カシュガルの郊外に出て、わざわざロバ車の写真を撮って来ました。ロバ車だけではなく馬車も混じっていますが、圧倒的に多いのはロバ車です。
4travel.jp/traveler/beijing-niujie/album/10184972/

◆ カシュガル(喀什)は、新疆ウイグル自治区にある中国最西端の都市。

◆ ロバを漢字で書けば「驢馬」、つまりはロバも馬の一種だから、「ロバ車」は「驢馬車」で、ロバが馬車を引いても一向にさしつかえないかもしれない。

◆ あるいは、「馬車」というのは、引かれる車のことを指すコトバなのだから、馬が引こうがロバが引こうが、馬車は馬車だ、と考えるひとも多いだろう。

◆ 英語で馬車に対応する語は種類によって、「carriage」とか「coach」とか「cart」とか「wagon」とか、いろいろあるが、それらの語に「馬」は含まれておらず、馬を含めて馬車と言う場合には、「horse and carriage」とか「horse and cart」などと言う必要があるようだ。

◇ 紀元前3000年ごろのメソポタミア文明の頃にはじめて車輪の付いた荷車が発明され、紀元前2500年ごろのシュメール文明の頃には、馬やロバ、そして牛などに引かせる荷車が開発された。馬車は長い間輸送の手段として重要な役割を果たしてきたが、その後、蒸気機関車による鉄道網が整備されて大量輸送が確立されると、一時的に荷馬車は衰退するが、鉄道の駅では商品の輸送量が増え、かえって荷馬車の需要は多くなった。
blog.goo.ne.jp/yousan02/e/8cd0b046b2973fa716d94143260bd44b

◆ ↑の文章で、「馬やロバ、そして牛などに引かせる荷車」=「馬車」と読んでいいものかどうか、ちょっと迷う。

◆ 日本語では、牛が引くのは馬車ではなく「牛車」というのがふつうだろう。牛車を「ぎっしゃ」と読めば、さらに歴史的重みが加わる。もし日本に馬がいなければ、ロバの牛車という表現になっていたかもしれない。

◆ 馬車を引くのは馬がふつうだが、ロバでもよい。牛はだめだろう。では、ラクダはどうか?

◇ アフガニスタンの馬車は馬の代わりにラクダを使用 ― と云う訳で、過酷な労働を強いられるラクダちゃんですが、そもそも馬・ロバが車を引くから馬車なのであって、ラクダの場合はラクダ車と呼んだ方が良いのかどうか解らん。まぁ、どうでも良いんだけど。
skmwin.net/archives/002759.html

◆ では、トナカイはどうか?

♪ Snow-white トナカイの馬車に乗り あなたの家めざすの
松田聖子「雪のファンタジー」(作詞:松本隆)

◇ 札幌大通りにサンタの乗った馬車を引くトナカイが・・・!
www.recruit-hokkaido-jalan.jp/blog/2008/12/post-499.html

◆ 札幌にトナカイの馬車? ちょっと気になって調べてみると、

〔2008/12/19 05:56 【共同通信】〕 クリスマスはサンタの馬車に乗りませんか-。札幌市の大通公園周辺で、角を付けてトナカイに扮した馬をサンタクロースが操る観光ほろ馬車が子どもたちの人気を集めている。〔中略〕 馬車を引くのは元ばんえい競馬のばん馬「銀太」(雄、7歳)で、白い息を吐きながら約1・7キロの行程をゆっくりと30分かけて周回する。
www.47news.jp/CN/200812/CN2008121901000005.html

◆ なんのことはない、トナカイに扮した馬の馬車だった。もしかして、コイツがトナカイ「銀太」だったのか? 写真まで撮っていたとは、われながらびっくり。

◆ ロバからトナカイ。なんだかよくわからないけど、満足満足。

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