MEMORANDUM

  swan と白鳥

「ウサギとカメ」という記事を書いたときに参考にしたサイトに、日本語では区別されないが、英語では別種として区別される動物のリストがある。

●"turtle"「かめ」と "tortoise"「カメ」
●"rabbit"「うさぎ」と "hare"「ウサギ」
●"mouse"「ねずみ」と "rat"「ネズミ」
●"pigeon"「はと」と "dove"「ハト」
●"frog"「かえる」と" toad"「カエル」
●"bee"「はち」と "wasp"「ハチ」
●"dolphin"「いるか」と "porpoise"「イルカ」
●"alligator"「わに」と "crocodile"「ワニ」

ameblo.jp/la-barmaid/entry-10018064153.html

◆ なるほど。これは参考になる。このリストの前後も引用すると、

◇ こんな風に日本語では、似ているという理由だけで、名前がいっしょくたになっているものが結構あり、特に動物などにそれが多い。日本人が生物に興味がないのか、それとも翻訳を監修した人の中に生物学に詳しい人がいなかったのかどちらかにちがいない。〔中略〕 でも、こうやって見ていると、細やかといわれる日本人も、こういった生物上では、かなり鈍いと思える。これもそれもあれも、こんな同じでいいのかという感じだ。イギリスは動物愛護の精神というと世界でも有名だし、生活に森の動物が近くにいることが多いので、一般人のレベルでかなり詳しい人が多い気がする。

◆ これはあまり「なるほど」と思えない。下線部あたりに疑問が残る。とくに「翻訳を監修した人の中に生物学に詳しい人がいなかった」という箇所がよく理解できない。この文章を読んで「なるほど」と思ったと思われるひとのコメントも引用すると、

◇ "swan" を白鳥と訳した人は、"black swan" の存在知らなかったんでしょうね。"black swan" をそのまま、訳すと黒白鳥。"baseball" や "soccer" を野球や蹴球と訳したセンスが欲しかったですね。

◆ これも「なるほど」と思えない。先の「翻訳を監修した人の中に生物学に詳しい人がいなかった」と書くひとと「"swan" を白鳥と訳した人は、"black swan" の存在知らなかったんでしょうね」と書くひとにはともに、まるで日本語のすべてが英語の翻訳から成り立っているかのような思い込みがあるように思える。「baseball」や「soccer」など日本にもともとなかったものなら、新たに対応する日本語が必要になり、そのさいには翻訳者のセンスが問われるということもあるだろうが、「白鳥」は、なにも「swan」の訳語として作り出されたコトバではないので、翻訳者のセンスなど関与のしようがない。英語で「swan」と呼ばれる鳥は、日本に古来から飛来してきていて、日本語ではむかしから「白鳥」と言った。『日葡辞書』(1603)にも出ている(さらに古くは「くぐい(鵠)」と言った)。

◆ 慶応大学の磯野直秀先生によると、室町時代から江戸時代前期に書かれた『お湯殿の上の日記』という資料において、「くぐい」から「はくちょう」へのコトバの移り変わりが見られるという。

〔磯野直秀「博物誌資料としての『お湯殿の上の日記』」(The Hiyoshi review of natural science (40), 33-49, 2006)〕 なお,ハクチョウは古くから「くぐい」(鵠)と呼ばれており,この日記でも最初は一様に「くくい(ゐ)」と記されているが,永禄11年(1568)に初めて「はくてう」の名が登場し,徐々に後者の呼び名が増え,天正15年(1587)頃には「くくい」の表記がほぼ消え去る。もっとも,『看聞御記』では永享7年(1435)頃から「白鳥」の呼び方が珍しくない。
koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=10485

◆ 先の引用に「"black swan" をそのまま、訳すと黒白鳥」という箇所があって、これを書いたひとは、それだから「swan」を「白鳥」と訳すのはおかしいと主張しているように読める。たしかに「黒い白鳥」という言い方は変だといえば変だが、これは英語の「black swan」の場合でも、ほとんど同じではないかという気がする。「swan」というコトバ自体に「白」を示す要素はなくても、「swan」といえば「白い鳥」をイメージするのがふつうだろう。日本語で「白いカラス」は変なのか変ではないのか? ちなみに、「black swan」は日本語では「黒白鳥」ではなく「コクチョウ(黒鳥)」と呼ばれているので、とくに問題はないだろう。

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