MEMORANDUM

  風景(画)

◆ 「Belle Paysage ベル・ペサージュ」(美しい風景?)という名のマンションを見かけた。これがフランス語だとすると、アルファベットのほうは、paysage というのは男性名詞なので、belle(ベル)ではなく beau(ボー)であるはずで、「Beau Paysage」とすべきであろうし、カタカナのほうは「ベル・ペサージュ」ではなく「ボー・ページュ」と書かれるべきだろうが、このようなことを書いても仕方がないので、「paysage」についてちょっと調べてみた。

◆ 山梨大学の森田秀二先生によると、paysage の語義の歴史的な変遷は、まずは画家たちが「風景画」の意味で使い始め、それから「風景画に描かれた風景」の意味へと語義が拡張された、という順序になるそうだ。

〔「風景」にあたるフランス語paysageの語源をみてみよう〕 つまり、フランス語では「風景画」を指す語がはじめに生まれ、その後に意味が拡張されて「風景」そのものを指すようになったわけで、まさに現実が絵画を模倣するという転倒が起こったのである。
www.ccn.yamanashi.ac.jp/~morita/Subjects/phenomene/paysage_etymologie.htm

◆ すこしだけややこしいが、「風景(paysage)を描いた絵が風景画(paysage)」と呼ばれるようになったのではなく、「風景画(paysage)に描かれた対象が風景(paysage)」と呼ばれるようになったということで、つまりは、風景画(paysage)が描かれるようになる以前には風景(paysage)という概念は存在していなかった。

◆ 東北大学の五十嵐太郎先生の、マグリットの「風景の魅惑 Les Charmes du Paysage」と題された絵画に対するコメントも別な文脈で同じことを言っているのだろう。

〔『10+1』 No.09:大地を刻む──ランドスケープからランドスクレイプへ(五十嵐太郎)〕 「風景」が額縁を呼びこむのではない。額縁が「風景」を生成するという逆説のあらわれ?
db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/334/

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