◆ どうしてなのだろう? 「龍の夫婦」のことを書いたあとすぐに読み始めた文庫本に、また龍がいた。こういう「たまたま」はたいへん好きなのだが、出来すぎていて、ちょっと不安になる。まあいい、これはなにかの吉兆だろう。 ◇ 戦争中の辰年生まれ。クラスには龍一もいれば辰雄もいた。辰五郎などと威勢のいいのもいた。だいぶ前に引退した相撲の播竜山は郷土(くに)の名前とエトをとったシコ名で、たしか同郷同年生まれだったと思う。不器用な力士で、おっつけ一本槍、ひと場所だけ小結までいったが、根(こん)がなくなるとアッというまに幕下まで転落した。 ◆ すこしは減ったかもしれないが、いまでも多くの龍がいるだろう。播竜山のかわりに朝青龍がいる、いや、もういないのだったか。子供の日課に水汲みはないかもしれないが、神社に行けば、龍が口から勢いよく水を吐き出しているだろう。ほかにはどこにいたっけな? などと考えながら、つづきを読む。 ◇ どうしてこんなにもどっさり龍がいるのだろう? ひとつ、温泉にでもつかりながらとくと考えてみたい。 ◆ と、これは『温泉旅日記』という本だから、温泉のハナシになるのは仕方がない。ワタシも、急なことだから温泉には行けないけれど、「龍」の名をもつ銭湯に行ってとくと考えてみるのはどうだろう? なかなかいい思いつきなような気がする。善は急げ、ではさっそく出かけよう。目指すは「天龍泉」。なんと立派な名前だろう。そういえば、天龍という力士もいたっけな。プロレスに行っちゃったけど。 |
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