◆ 「芋は哀し」で引用した塚本邦雄の文章を、さらにもう一度引用すると、 ◇ 平凡なシルーエットは大嫌いだ。たとえば世界地図を展げるなら、ボルネオ、スマトラ、ジャワ、マダガスカル等、芋を転がしたような単純で鈍重な形象には全く興味を持たず、鼠に噛まれる窮猫の形のセレベス、毒を吐く蜥蜴の形のパプア、毀れたギヤマンの瓶と甕をばら撒いたかのフィリッピン群島各島、日本でなら乾鱏の北海道など面白いものに属し、自分の地図にも大いに採り入れた。〔原文は旧字旧仮名〕 ◆ ここに挙げられた島の名前は、北海道をのぞいてワタシにはなじみがなく、その形をはっきりとイメージすることができないものばかりだけれど、「鼠に噛まれる窮猫の形」とか「毒を吐く蜥蜴の形」と書いてあるのを読むと、どうにもその形を確かめたくなる。こんなことをしていると、時間がいくらあっても足りなくなって、図書館の返却期限に遅れてしまう。 ◆ とりあえず、セレベス島(現在はスラウェシ島)だけ、ちょっと。「鼠に噛まれる窮猫の形」か。ううん、この見立てはちょっと上級者向けのようだ。どこにネコがいてネズミがいるのか、よくわからない。北部の「ー」はシッポだろうけど、これはネズミのものなのか、ネコのものなのか? こんなに長いシッポはやはりネズミのものだろうか。だとすると、ネコが3匹いることになるのか? いや、3匹のネズミが1匹のネコに噛みついているようにもみえる。それとも、まったく別な見立てだろうか? ◆ 見立ての初心者は、この島の形を「K」に例える。これならわかりやすい。 ◇ インドネシア中部に位置するK字形の島。 ◆ また、シバ神が手にする「三叉戟」(trident)にも例えられる。これは中級だろうか。フランス語版の Wikipédia によると、 ◇ Ce nom est généralement interprété comme signifiant "trident de fer" (sula, du sanscrit trisula, "trident", l'un des attributs du dieu Shiva, et wesi ou besi, "fer"), à cause de la forme caractéristique de l'île, sorte de "K" dont la branche supérieure s'incurve vers l'est. ◆ この三叉戟(さんさげき)というのも、調べるとおもしろそうだが、ハナシを元に戻すと、いや、もう戻りそうにないが、今度は、セレベスの形がプジョーのライオンに見えてきた。このライオンのロゴデザインも、時代とともにさまざまに形を変えてきて、今年からまた新しいものになったようだが、これは島のディテールを連想させるにはあまりに直線的すぎるので、ひとつ前の「青ライオン」の画像を載せる。左右を反転すれば少しはセレベスに似るだろう。ろくろ首のライオン。そういえば、ライオンもネコの仲間だったのではないか。 ◆ セレベス、セレベスと書いてきたが、現在はスラウェシと書くのが「政治的に正しい」行為である。とはいえ、スラウェシという名をいままで知らなかったのだから仕方がない。いま日本でセレベスといえば、芋のことだろうか? ◇ 〔野菜図鑑〕 セレベス(Celebes)は、サトイモ(里芋)の仲間のサトイモ目サトイモ科サトイモ属(コロカシア属)の非耐寒性イモ類です。インドネシアのセレベス島(現スラウェシ島)から伝来したサトイモの一種で、千葉が主要な産地となっており早生栽培されます。 ◆ セレベス芋! ああ、今度は島の形が、芋に見えてきた。親芋に小芋が4つ! |
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sulaのsは「チャ」の位置で発音する口蓋音,uは長音なので,「シューラ」てな感じです。刑罰に使われる鉄杭を指すので,罪人を罰することを「シューラに上らせる」と言います。医学書では「疼痛」ときには「死」も意味します。あと,なぜか「売春婦」を意味する用例もあるようです。
panini4117 さん、
専門的な情報をありがとう。
でも、Sulawesi の Sula が trisula の sula というのは無理があるかも。なんで、tri が省略されるのか。あの《Wikipedia》の記事の続きには、「昔の人が島の形を知ってたはずがないから」と別な語源説も提示してありました。