MEMORANDUM

  芋は哀し

◆ 焼き芋を食いながら、本を読んでいると、芋が出た。歌人・塚本邦雄は幼少のころ、自分で架空の地図を作って遊んでいたという。

◇ 平凡なシルーエットは大嫌いだ。たとえば世界地図を展げるなら、ボルネオ、スマトラ、ジャワ、マダガスカル等、芋を転がしたような単純で鈍重な形象には全く興味を持たず、鼠に噛まれる窮猫の形のセレベス、毒を吐く蜥蜴の形のパプア、毀れたギヤマンの瓶と甕をばら撒いたかのフィリッピン群島各島、日本でなら乾鱏の北海道など面白いものに属し、自分の地図にも大いに採り入れた。〔原文は旧字旧仮名〕
塚本邦雄『半島』(白水社,p.70)

◆ 「芋を転がしたような単純で鈍重な形象」をした島々。ボルネオ芋、スマトラ芋、ジャワ芋、マダガスカル芋。これらの芋はどんな芋だろう? ジャワ芋は、やはりジャガタラ芋だろうか? また、別な本に、

◇ 廓では分娩は御法度だった。遊女の産んだ子は「芋が子」と呼ばれ、山谷や三輪あたりから吉原に芋などを売りにくる農家の人に里子に出してしまう、と鴇手(やりて)のおかちさんが言っていた。
斎藤真一 『吉原炎上』(文春文庫,p.102)

◆ この芋はなんだろう。「里子だから、里芋?」と誰かが言った。うまく笑えない。

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