MEMORANDUM

  カバのナツコ

◆ 正月休みに、なんとなくカバが見たくなったから、大阪の天王寺動物園に行った。カバがいるのかどうかを確かめもしなかったが、パンダじゃあるまいし、まあ、カバぐらいどこの動物園でもいるだろう。カバを見たくなった「なんとなく」な理由は、「象や河馬」という記事で引用した吉田健一の、

◇ 一体に旨い魚や鳥というのは飼って見たらさぞ可愛いだろうという気がして、これは例えば石川県金沢のごりがそうであり、獣の中では象や河馬が可愛いが、その両方とも非常に旨いそうである。
吉田健一 『私の食物誌』(中公文庫,p.26-27)

◆ という文章が相変わらずどこかで気になっていて、カバをこの目で見たら、食べたくなるかどうか、を確かめてみたいと思ったから、ということになるのだろうけど、まじめに考えているわけでもないので、「なんとなく」ということにした。その結果はというと、いままでカバをちゃんと見たことはなかったなあ、というのが第一の感想で、シッポがどうなっているのかとか、けっこうな時間水中に潜っているんだなあとか、見ていると楽しくて、とてもじゃないけど、食欲まではアタマが回らなかった。いや、食欲などというのは、アタマを経由しないのが本物なような気もするので、ハヤリのコトバで言うと、ワタシは「草食系」ということになるのだろう。

◆ 以上のような内容をうまくまとめて、また新しい記事を書こうと思っているうちに、だらだらと時間が過ぎて、待ちきれずに、くだんのカバがなんと往生を遂げてしまった。

〔スポニチ:2010年02月01日 16:25〕  大阪市天王寺区の天王寺動物園は1日、飼育していた37歳の雌のカバ「ナツコ」が死んだと発表した。人間なら80歳前後といい、同園で飼育されたカバの中で最も長寿だった。
 ナツコは1972年に同園で生まれ、4頭の子を出産した。体長は約3・3メートル、体重は推定約2トン。大きな口を開け、飼育員が放り投げる好物のリンゴやバナナを丸のみする姿が人気だった。

www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100201075.html

◆ 動物園のカバには名札がついていなかったし、またカバを区別できるほどカバになじみがあるわけでもないので、ワタシの見たカバが新聞記事のナツコだったのかどうか、はっきり言うことはできない。でも、カバ好きの京都の小学校の先生の《ぼちぼちいこか》というサイトの「天王寺動物園のカバ」というページに、

◇ カバは池の中にいます。池はつながっているのですが、大きな池と小さな池に分かれています。大きな池にテツオとティーナ夫婦。小さな池にテツオの母であるナツコがいます。名前は動物園の人に確かめました。
shigeru.kommy.com/kabatennouji.htm

◆ と書いてあって、あのカバは「小さな池」にいたのだから、その後入れ替えたりしてなければ、あれはやっぱりナツコだったんだろう。

◆ その「小さな池」の前で、ほとんどの時間を水の中にいて、たまにしか水面に顔を出さないカバの影を見ていたら、となりにいた中学生ぐらいの3人組の女の子のひとりが、たまたま顔を出したカバを見て、

◇ 「カバって、ブタみたいやなあ」

◆ と言った。それが聞こえて気分を害したのだろうか、カバはもう水中に潜ることはせずに、池から上って寝床のある方へ帰ろうとし始めた。それを見て、また別な女の子が、

◇ 「あんたが、ブタゆうたからやん。カバ怒ってるで。謝っとき」

◆ と言った。それを聞いて大人気ないと思ったのか、それとも寝床の扉が閉まっていただけなのか、カバはまたワタシ(たち)の見えるところに戻ってきて、そのおかげで、さらに数枚、写真を撮ることができた。それがナツコ、カバのナツコ。

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