◆ 職業に貴賎はないが、好き嫌いはある。 ◆ 永六輔の 『大語録』 という本をせっかく図書館から借りてきたので、パラパラとページをめくっていると、 ◇ 「広告代理店にも、いい人はいます。でも、いい広告代理店はありませんよ」 ◆ この文章をヒナガタとして、広告代理店をほかのコトバに置き換えてみるのもおもしろい。社会保険庁とか。緑資源機構とか。特殊法人とか。マスコミとか。いや団体であれば、業種を問わず、ほどんどの団体にマッチするヒナガタであるかもしれない。組織とはそういうものかもしれない。 ◆ 内田樹がブログでこんなことを書いていた。 ◇ 〔内田樹の研究室〕 代理店がらみの仕事は前に一度だけやったことがある。そのときに 「今後二度と広告代理店がらみの仕事はしない」 と堅く心に誓ったのである。別に代理店でお働きになっている個々の方々に怨みがあるわけではない。業界の風儀が私の肌には合わなかったというだけである。別に一般論として 「広告業界はよくない」 などという非道なことを申し上げる気はない。私はそちら方面の仕事は性に合わないのでやらないというだけのことである。したい方はどんどんなされればよい。私はそういうこととには不案内な人間なので、そちら方面には足を向けない。東は東、西は西。 ◆ 広告代理店はいまでも人気の業種であるのだろう。こんな就職希望者がいる。 ◇ 〔毎日就職ナビ:エントリーシート添削講座〕 また広告のターゲットは人の心であり、そこにダイレクトにアプローチできるので、それを見た人とも繋がりがもてることも広告業界ならではだと思います。実際、私も朝日新聞のジャーナリスト宣言の広告を見たとき、言葉の儚さや葛藤から抜け出し、前向きに言葉と付き合おうと思ったことを覚えています。私も、ただ商品を宣伝するだけでなく、人生が少しだけ楽しくなるような広告がつくりたいです。 ◆ 朝日新聞の 「ジャーナリスト宣言。」 の広告ポスターはこんなのだった。「言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでも私たちは信じている、言葉のチカラを。ジャーナリスト宣言。朝日新聞」。どこの広告代理店が作ったのかはしらないが、どれだけの費用がかかったのかはしらないが、この広告にどんな効果があったのだろうと不思議に思う。逆効果も効果のうちか? ◆ べつな広告のことも思い出した。これについては、以前 「不気味な広告」 で書いた。 ◇ 命は大切だ。命は大切に。そんなこと何千何万回言われるより 「あなたが大切だ」 誰かがそう言ってくれたらそれだけで生きていける。 ◆ いま見直しても不気味だ。こんな言葉のチカラなどワタシにはとてもじゃないが信じられない。 ◆ あと、見るたびに腹立たしいのがJRAのポスター。これについては 「JRAのメインキャラクター」 に書いた。ワタシの投資した少なからぬお金が、どこの馬の骨ともわからぬタレントの懐に入っているかと思うと、まったく腹立たしい。これはまったくの私憤であるが、義憤を感じることもある。 ◆ 毎日新聞にこんなニュース。《クールビズ:キャンペーン日当、1人当たり7万6300円》 ◇ クールビズなど地球温暖化防止を訴えるキャンペーンのため、環境省が大手広告代理店 「博報堂」 に支払う日当(1日7時間)が最大で1人当たり7万6300円に上ることが分かった。時給なら1万円を超える計算だ。19日の参院文教科学委員会で、民主党の蓮舫委員が、環境省の資料を分析した結果として明らかにした。契約は05年度から3年連続で結ばれており、今年度の総費用は約27億円、3年間では80億円を超える見通し。 ◆ この金額、大手広告代理店に支払う費用としては妥当であるのかもしれないが、それが 「無駄遣い」 でないかどうかはまた別な問題だろう。このキャンペーン費用に見合った効果が得られなかった場合の責任はいったい誰がとるのだろう? ◆ 学生のころ、一度だけ広告代理店の仕事をしたことがある。数時間でデタラメなフランス語の翻訳をして、10万円の報酬。生まれ変わったら、そのときはぜひ広告代理店に就職したいものだ。 |
このページの URL : | |
Trackback URL : |