◇ 彼等はすべて著しく無智であったが、親切で鷹揚で、狡猾懶惰(らんだ)な我々中年の兵士をかばってよく働いてくれた。彼等は体力を調節して使うことを知らず、病に遇うとすぐ斃(たお)れた。 ◆ 引越屋はもちろん兵士ではなく生命の危機にさらされることがあるわけでもないので、深刻さにおいてかなりの程度の差があるけれども、この文章にはまったく頷かされる。 ◆ ワタシの働くのはトラックが十台にも満たない小さな引越屋だが、最近は作業員の募集をすると、集まるのはきまって四十代で、それはそれで昨今の景気を反映していたりもするのだろうが、いかんせんみな体が動かない。四十を過ぎて慣れない力仕事に応募してきたそれぞれのさまざまな事情についてはいろいろと同情しないわけではないし、作業にしても手を抜こうとしているわけではないと信じもするが、彼等はすでに 「体力を調節して使うこと」 を全身で身につけており、ややもするとそれが 「狡猾懶惰」 に見えもするのだ。気がつくと姿が見えないことがある。探すと自主的に休憩をとっている。もう少しで休憩にしようと思っていたのに。ふだんは休憩を入れないところだが、彼の体力を考慮して、もう少しで休憩にしようと思っていたのに。 ◆ それにしても若者はどこにいるのだろう。「体力を調節して使うことを知らず」、われわれのいうがままに体力の限界まで作業をして 「すぐ斃れた」 若者たちは。そんな彼らには、「ちょっと休んでていいよ」 と優しく言ってやることもできたのだが・・・。 ◆ かくいうワタシも四十代で、「狡猾懶惰」 になる日もそう遠くないだろうと思う。 |
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狡猾ではないが完璧に懶惰です。
rainer さん、
いやいや、お昼寝は大事大事。