MEMORANDUM

【注文の多い引越屋】  引越アンソロジー

◆ いつだったか、読んだ本のなかから引越にかんする記述を抜き出してアンソロジーでも作ればおもしかろうと思ったことがあった。このようにアイデアだけはいろいろ思いつくのだが、最近は本を読むこともめっきり少なくなったので、実現には永遠に近い時間がかかる。とはいえ、ひとつだけ見つけたので、将来のための資料として記録しておくことにする。

◇ なにしろ移動距離はわずか二キロ。そうなれば人海戦術だと心に決める。わたしの家から運び出す物といっても、本が数千冊と、アフリカなどの各地の仮面や彫刻、壺などの小物が少々、それでほぼ終わりである。家具らしいものがない家庭だ。ただ大型の冷蔵庫と、愛用の特大オーブン、このふたつだけは小型トラックで運ばなければならない。近所のデンキ屋さんと豆屋の息子さんが、「仕事の後には車が空くので手伝いましょう」 とこの分は受け持ってくれることとなる。日頃から親しくしている近所の美容院のすてきなおねえさん達が、やはり仕事の後に家に来て、台所や食器などをすっかり洗い清め、部屋を掃除してくれる。 / 運転の腕の確かな友人がトラックを借りて来て、一度に大量の本を運んでくれた。しかし、その残りは、親しい友人が数人で、二週間ほど毎日ひまを見つけては小物を風呂敷などに包み、戦後の街を往来したカツギ屋風に次々と新居に運び入れてくれる。その作業姿は日没の後ならば、まさに夜逃げと変わるところがない。
西江雅之 『旅は風まかせ』(中公文庫,p.183)

◆ ところで、いま思い出したのだが、大学の図書館で受付のバイトをしていたころに、『日本の名随筆』 というシリーズ本をよく借りては読んでいた。「旅」 やら 「珈琲」 やらのテーマ別に編まれたアンソロジーは全部で200巻にもおよぶから、ひょっとすると、「引越」 の巻もあったやもしれぬと調べてみると、案の定ありました。『日本の名随筆 別巻24 引越』(中村武志編,作品社,1993)。出版社のサイトにその目次があったので参考までに。

◇ 【目次】
   志賀直哉    転居二十三回目
   鏑木清方    引越ばなし
   内田百閒    掻痒記
   里見弴     引越
   池波正太郎   家
   草野心平    転・転・転 「わが青春の記」より
   永井龍男    引越しのこと
   大岡昇平    六十の引越
   庄野潤三    多摩丘陵に住んで
   尾崎一雄    家賃に就ての考察
   上林暁     わが家の家賃値上げ問題
   林芙美子    貸家探し
   高田保     貸家を探す話
   山之口貘    自分の家に住む夢
   福永武彦    引越やつれ
   堀多恵子    ふるい日記より その二
   杉本秀太郎   引越しの夢
   立原正秋    転居記
   長部日出雄   引越し人生
   青野聰     住む場を選ぶ自由
   津島佑子    引越し前夜
   神吉拓郎    後楽園住宅展示場
   江藤淳     翔んでる犬
   長田弘     ねこに未来はない(抄)
   高田宏     引越しという難問に出会って
   森瑤子     引越しは旅かしら?
   田辺聖子    かしや
   中村武志    タンポポ洋装店の移転

www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/zui-bekan/tanpin/8447.htm

◆ もしかしたら読んだことがあるかもしれないが、記憶がない。当時は引越屋になろうとは思いもしなかったから。

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COMMENTS (2)

皐月 - 2004/10/31 21:26

引越回数。覚えていないのも含めると。
10回。
家族と一緒に越したのが、5回。
アパートに越してからが、5回。
その結果、まともな家具を持ち合わせないまま
現在に至っております・・・。(箪笥は二棹ありますけども)

Saturnian - 2005/02/16 21:18

皐月さん。引越のプロだね。ワタシもできるだけ身軽でいたいと思ってはいるのだけど・・・。

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