◆ しかたなく「戦闘員資格という概念は非国際的武力紛争には存在しないので」という言葉を書き綴っていたら、突然ニワトリが出てきた。眠気覚ましに、ちょっと「には」のハナシを書くことにしよう。
◆ 一週間ほど前、駅からの帰り道、と書くと電車に乗ったと思われるだろうが、そうではない。駅前に用事があっただけであるが、それはともかく、家への帰り道、前方に親子連れが歩いていた。女の子が右へ寄ったり左へ寄ったりふらふらしながら、おかあさんに「にわにわにはにわにわとりがいる。うらにわにはにわにわとりがいる。幼稚園でならったの」とうれしそうに披露していた。なんとも微笑ましい光景である。で、その「には」が今になって出てきたわけである。
◆ にわにはにわにわにわとりがいる。うらにわにはにわにわとりがいる。にははにわとにわにわとりのあいだにいた。にははうらにわとにわにわとりのあいだにいた。さっきまで。でもいまはいない。にははにわとにわにわとりのあいだにはいない。にははうらにわとにわにわとりのあいだにはいない。あれ、やっぱりいる。にははにわとにわにわとりのあいだといないのあいだにいた。にははうらにわとにわにわとりのあいだといないのあいだにいた。さっきまで。でもいまはいない。にははどこへいったんだろう。
〔庭には二羽ニワトリがいる。裏庭には二羽ニワトリがいる。「には」は庭と二羽ニワトリの間にいた。「には」は裏庭と二羽ニワトリの間にいた。さっきまで。でも今はいない。「には」は庭と二羽ニワトリの間にはいない。「には」は裏庭と二羽ニワトリの間にはいない。あれ、やっぱりいる。「には」は「庭と二羽ニワトリの間」と「いない」の間にいた。「には」は「裏庭と二羽ニワトリの間」と「いない」にいた。さっきまで。でも今はいない。「には」はどこへ行ったんだろう。〕
◆ ニワトリは庭にしかいないけれど、「には」は非国際的武力紛争なんてところにも出てくる。「には」ってすごいなあ。
◆ 以下、おまけ。この「にわには」を同音異義語の実例として国語の授業で取り上げた先生の実践報告をネットで見つけた。生徒に絵を描かせてみたらしい。その結果は、「鶏の数は、1,2、4匹と様々であった」そうだ。「,」「、」の混交も気になるが、なんといっても「匹」が気になる。「にわには」は同音異義語のいい実例でもあるが、数助詞のいい実例でもある。「庭には2羽、裏庭には2羽、合わせて何羽?」という質問に「4匹」という回答がはたして国語の授業で正解なのかどうか? あいかわらず、眠い。