MEMORANDUM

  優曇華

◆ 「薬師でめめめ」の川柳を『誹風柳多留全集』(岡田甫校訂,三省堂)で確認したさい、ついでに前後の句もちらほら読んでみたが、皆目わからず。唯一わかったのがこれ。

◇ 優曇華を三度見てから龜ハ死(柳多留152・11)

◆ 三千年に一度しか咲かない珍しいウドンゲ(優曇華)の花も、一万年生きる亀なら三度も見ることができる。

ウドン‐げ (名) 優曇華〔うどんハ梵語、優曇鉢羅(ウドンバラ)の略、瑞應の義〕(一)天竺ニアリトイフ樹ノ名、常二、實アリテ花無ク、三千年ニシテ、始メテ花アリト云フ、若シ此樹ニ金花アルトキハ、佛、世ニ出ヅト云ヒ、又、轉輪聖王、世ニ出ヅレバ、此花生ヅトモイヒテ、世ニ稀ナルコトノ譬ヘトス。(二)芭蕉ノ花ノ稱、寒國ニテハ、花稀ニ開クガ故ニ、譬ヘテイフ。(三)無花果(イチジュク)ノ異名。(加州)(四)一種ノ蟲ノ、其卵ヲ草木ノ枝、或ハ屋内ノ器物ナドニ着クルモノ、長サ四五分、白キ絲ノ如クニシテ、頭ニ白ク小キ卵アリテ、花苞ノ如シ、六足四翅ノ蟲ニ羽化ス、虻(アブ)ノ類ナリ。
大槻文彦『言海』(ちくま学芸文庫,p.254)

〔WikiArc:うどんげ〕 優曇は梵語ウドゥンバラ(udumbara)の音写、優曇鉢羅(うどんばら)の略。優曇鉢華(うどんばけ)・優曇鉢樹(うどんばじゅ)ともいう。霊瑞華と漢訳する。桑科のイチジクの一種で三千年に一度だけ咲く花という。仏の出世が稀なことや、めでたいことのおこる前兆を示す喩えに用いられる。
labo.wikidharma.org/index.php?title=うどんげ&oldid=27293

◆ 三千年に一度といえども、かなり運がよければ、寿命百年の人間であっても見ることができるだろう。とてつもなく運がよければ、寿命一日の蜉蝣(カゲロウ)であっても見ることができるだろう。反対に、寿命千年の鶴だって、運が悪ければ、見ることができないだろう。

◇ 優曇華を一度も見ずに鶴は死に

◇ 優曇華を見て蜉蝣はすぐに死に

◆ カゲロウといえば、先に引用した『言海』には、「優曇華」の意味として、四番目に昆虫の卵が挙げられていて、「(四)一種ノ蟲ノ、其卵ヲ草木ノ枝、或ハ屋内ノ器物ナドニ着クルモノ、長サ四五分、白キ絲ノ如クニシテ、頭ニ白ク小キ卵アリテ、花苞ノ如シ、六足四翅ノ蟲ニ羽化ス、虻(アブ)ノ類ナリ」とあって、この「一種ノ蟲」を大槻は「虻ノ類」としているが、これはクサカゲロウのことらしい。

〔虫の雑学(梅谷献二):うどんげの花〕 クサカゲロウはアミメカゲロウ目の昆虫で、英名で lacewing-flies(レースの翅の虫)または aphis-lions(アブラムシのライオン)と呼ばれている。〔中略〕 特徴的なのはその卵で、雌が腹の先から葉面に一滴の液を落とし、腹を持ち上げるとそれが糸状に伸びて固まり、その先端に卵を生む。同じ場所に何本かまとめて産卵するが、糸が細いので卵が空中に浮遊しているように見える。また、成虫は明かりに飛来する性質があり、よく電灯の笠などにも産卵することがある。そして、古く日本ではこれが植物と誤認された。それも、3千年に一度花が咲き、開花のときには如来が世に現れるという伝説の"うどんげ(優曇華)の花"とされたのである。
www.afftis.or.jp/konchu/mushi/mushi92.htm

◆ とりあえず、いまのところはまだ、優曇華を見たことがないが、クサカゲロウの卵なら、死ぬ前に一度くらいは見ることもできるだろう。

関連記事:

このページの URL : 
Trackback URL : 

POST A COMMENT




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)