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  消えゆく関西たべもの言葉

◆ 「消えゆく関西たべもの言葉」というニュースの見出し。妙に語呂がいい。漢字とひらがなのバランスもいい。内容はというと、

〔asahi.com:「煮抜き、お造り、関東炊き…消えゆく関西たべもの言葉」(2010/02/08)〕 煮抜き、五目ずし、関東炊(かんとだ)き……。「食」に関する関西ことばが日常生活から急速に姿を消している。武庫川女子大学言語文化研究所(兵庫県西宮市)の岸本千秋助手(44)の調査でわかった。「まずい」を意味する「もみない・あじない」は絶滅寸前だ。
 調査は2008年11~12月、武庫川女子大の学生124人と、同研究所に普段から協力している一般の20~60代の158人を対象にアンケート方式で実施。関西とそれ以外の地域で異なる呼び名を持つ「食」に関する言葉を並べ、どちらをよく使うか選んでもらった。一般の回答者には、子どもの頃どちらを使っていたかも答えてもらった。
 その結果、60代以上のほぼ半数かそれ以上が子どもの頃に使っていた「なんば」「ごんぼ」「関東炊き」「ばらずし・五目ずし」という単語が、それぞれ「トウモロコシ」「ゴボウ」「おでん」「ちらしずし」に変わっていた。学生は、これら四つの関西ことばを使う割合が1割に満たなかった。「もみない・あじない」は30代以下でほぼ消滅。「煮抜き」(ゆで卵)も50代以下ではほとんど使われなくなっていた。
 「かしわ」「お造り」は学生の1~2割が今も使うと答えたが、すべての世代で「鶏肉」「お刺し身」を使う割合が拡大。60代でも「鶏肉」「お刺し身」が5割を超えていた。

www.asahi.com/national/update/0201/OSK201002010078.html

◆ 京都出身の46歳男性の場合(ワタシのことだが)。「なんば」「ばらずし・五目ずし」「煮抜き」「かしわ」「お造り」は、むかしはよく使った。「ごんぼ」「関東炊き」「もみない・あじない」は、むかしからほとんど使ったことがない。いまはどれも使わない。

◆ 「ごんぼ」といえば、これも『夫婦善哉』の冒頭に出てくる。「おっさん、はよ牛蒡(ごんぼ)揚げてんかいナ」という子どもたちの声。

◇ 年中借金取が出はいりした。節季はむろんまるで毎日のことで、醤油屋、油屋、八百屋、鰯屋、乾物屋、炭屋、米屋、家主その他、いずれも厳しい催促だった。路地の入り口で牛蒡(ごぼう)、蓮根、芋、三ツ葉、蒟蒻、紅生姜、鯣、鰯など一銭天婦羅を揚げて商っている種吉は借金取の姿が見えると、下向いてにわかに饂飩粉をこねる真似した。近所の小供たちも、「おっさん、はよ牛蒡(ごんぼ)揚げてんかいナ」と待てしばしがなく、「よっしゃ、今揚げたアるぜ」というものの擂鉢の底をごしごしやるだけで、水洟の落ちたのも気付かなかった。
織田作之助『夫婦善哉』(青空文庫

◆ 「鯣」は「するめ」と読むらしい。「待(ま)て暫(しば)しがない」は、「しばらくの間も待つことができない。せっかちである。短気である」(大辞林)の意だそう。

《全国大阪弁普及協会》には、「関西たべもの言葉」がわんさか載っている。なかには、「消えゆく」コトバもあるだろうし、逆に全国に広まったコトバもあるだろう。京都出身の46歳男性がなつかしく感じたのは、「こうこ、おこうこ(たくあん)」「ぼんち揚げ(歌舞伎揚げ)」「やきめし(炒めご飯、チャーハン)「きずし(しめサバ)」、など。「かんとだき」の項の解説を読むと、

◇ 「関東煮」と書く。ダイコン、ちくわ、あつあげ、がんも、ゴボウ天、ゆで卵、里芋、こんにゃく、牛すじ肉、巾着、鯨の舌などを出汁醤油味で煮込んだ鍋料理。ちくわぶやはんぺんは存在そのものを知らない。
www.osakaben.jp/osakaben/bunpou.html

◆ 「ちくわぶ」か、いまだに慣れない。

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