MEMORANDUM

  似ているような似てないような

◇ じつは私は、ものごとの理解が遅いんです。こんな本を書いたりしているから、早いと思う人もいるでしょうが、いまでも他人のいったことを、一年間考えたりするんです。だから、ただいま現在のことを、あれこれ議論するような会議は、徹底的に苦手です。その場の議論についていけないんです。だから会議では意見をいわなくなる。教授会で意見をいったのは、十三年のなかで一回だけですからね。なにしろ一年考えて、それからやっと返事できるんですから。蛍光灯もいいところです。
養老孟司『運のつき』(新潮文庫,p.66-67)

◆ 似たようなことを川上弘美もエッセーに書いてたなあ、と思って、本棚を探してみる。たいていの場合、つぎつぎと本をひっくり返してみて、それでもなかなか見つからなくって、そのうちに関係のないページを熱心に読み始めてしまって、あげくになにかを探していたことさえ忘れてしまうことになるのだが、今回はすぐに見つかった。見つかったのだが、読みなおしてみると、これがあまり似ていない。

◇  頭の廻(めぐ)りが、悪い。
 たとえば、「あなたちょっと正確が悪いんでは」などと言われたとしても、「はあ」などと答えてその場では笑っている。五分後くらいに、やっと「性格が悪いと言われた」ことが頭の芯に届くが、その時にはもう話題は変わっている。じつに間抜けなことである。

川上弘美『あるようなないような』(中公文庫,p.65)

◆ いや、やっぱりちょっとは似ているか? すぐにはわからない。その答えを出すのに、ワタシの場合、どれくらいの時間がかかるのだろう?

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