◇ 〔朝日新聞〕 大阪市西区で幼い姉弟が自宅に置き去りにされ死亡し、母親の****容疑者(23)が死体遺棄容疑で逮捕された事件は6日未明に遺体発見から1週間となる。現場マンション前には連日100人以上が訪れ、手を合わせている。〔中略〕 ジュース、お菓子、おにぎり、おもちゃ、絵本、子ども服、「気付かずにごめんなさい」と書いた手紙……。飲み物の多くはストローが挿され、食べ物の箱やふたは開けられている。「幼い子でも飲みやすいように」との思いからだ。マンション前を訪れた人は3日に約150人、4日はさらに増え、5日も正午までに30人以上を数えた。
◆ このニュース記事が気になっていたので、とりあえず記事にしておこうと思って、さいしょに考えたのが、小林秀雄の「人形」というエッセーと並べてみるということだった。作者が急行列車の食堂車のテーブルで相席することになった老夫婦。妻は大きな人形を抱えている。人形は、「背広を着、ネクタイをしめ、外套を羽織って、外套と同じ縞柄の鳥打帽子を被っていた」。 ◇ 妻は、はこばれたスープを一匙すくっては、まず人形の口元に持って行き、自分の口に入れる。それを繰返している。 ◆ 飲み物にストローを挿すという行為は、スプーンで人形の口元にスープを運ぶ老婦人の行為と関連がないわけではないだろう。見えない人形。でも、すっきりしないし、とんでもなくあさはかな理解の仕方であるような気がして、記事にするのをやめにした。
◆ この光景を見て、気になっていたニュース記事のストローが挿された飲み物のハナシをまた思い出した。それで、どうせまとまりのない記事を書くのなら、人形のハナシなんかよりは、こちらの金魚すくいをする少女の浴衣の袂のハナシのほうが、たんじゅんでふさわしいような気になった。母親であるというのは偉大なことだ、とあいかわらずほとんど理解できないながらも、そうつぶやきなくなった。 |
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