MEMORANDUM

  狐にビール

◆ 小さな祠のお稲荷さんの狐の前に、コロナ・エキストラ。メキシコのビール。狐はビールを飲むのかな? 狐の親戚の猫だってビールを飲むそうだから、やっぱり狐も飲むんだろうな。でも、あの猫がビールを飲んだのはたったの一回きりだったな。

◇ 吾輩は我慢に我慢を重ねて、ようやく一杯のビールを飲み干した時、妙な現象が起った。始めは舌がぴりぴりして、口中が外部から圧迫されるように苦しかったのが、飲むに従ってようやく楽になって、一杯目を片付ける時分には別段骨も折れなくなった。もう大丈夫と二杯目は難なくやっつけた。ついでに盆の上にこぼれたのも拭うがごとく腹内に収めた。
 それからしばらくの間は自分で自分の動静を伺うため、じっとすくんでいた。次第にからだが暖かになる。眼のふちがぽうっとする。耳がほてる。歌がうたいたくなる。猫じゃ猫じゃが踊りたくなる。主人も迷亭も独仙も糞を食えと云う気になる。金田のじいさんを引掻いてやりたくなる。妻君の鼻を食い欠きたくなる。いろいろになる。最後にふらふらと立ちたくなる。起ったらよたよたあるきたくなる。こいつは面白いとそとへ出たくなる。出ると御月様今晩はと挨拶したくなる。どうも愉快だ。

夏目漱石『吾輩は猫である』(青空文庫

◆ でも、一回でも飲めたから幸せだったか。そういえば、ちょっと前に見た狐たちは、未来永劫ビールを飲む機会はないだろうな。酔っ払って暴れたから檻に入れられてるのかもしれないけど。左のはまだ隙間だらけだから差し入れもできそうだが、右のは上からビールをぶっかけるしかないな。コイツ、よっぽど悪いことしたんじゃないかな。

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