◆ 公園の片隅に、いかにもキノコが生えていそうな「風通しの悪いじめじめした場所」があって、近づくと、やっぱりキノコが生えていた。なんというキノコかしらないけど、裏側から覗いてみると、とってもきれい。 ◆ 「2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会で、日本代表の個性的な面々をゲームキャプテンとしてまとめた長谷部 誠選手(26)」がテレビのインタビューで、キノコの話をしたそうだ。 ◇ 〔FNNニュース〕 大会直前の強化試合で、結果を出せなかった日本代表。浴びせられた多くの批判について、長谷部選手は、「そういう批判は当たり前だと思ってましたけど、ちょうど合宿中に読んだ本で、『キノコは風通りの悪いところに生える』って。僕の好きな、フリードリヒ・ニーチェというドイツの哲学者がいるんですけど、その人が批判とか意見っていうのはね、そういうのがなければ、人間は成長しないって。その言葉を僕は大好きで」と語った。 ◆ ニーチェを読んでいるとは、さすがにドイツのブンデスリーガの選手だけのことはある、と感心した。読んだのがドイツ語の原書じゃなくても(そりゃそうだろう)、さらには日本語の「超訳」であっても、(まあ)同じこと。長谷部選手が読んだらしい『超訳 ニーチェの言葉』(白取春彦訳,ディスカヴァー・トゥエンティワン)は「40万部を超えるベストセラー」になっているそうだが、まったく知らなかった。キノコの話は、この「超訳」では、 ◇ キノコは、風通しの悪いじめじめした場所に生え、繁殖する。同じことが、人間の組織やグループでも起きる。批判と言う風が吹き込まない閉鎖的なところには、必ず腐敗や堕落が生まれ、大きくなっていく。批判は、疑い深くて、意地悪な意見ではない。批判は風だ。頬には冷たいが、乾燥させ、悪い菌の繁殖を防ぐ役割がある。だから、批判は、どんどん聞いた方がいい。 ◆ これをワタシがさらに超訳すると、 ◇ キノコは、人間社会における腐敗や堕落と同義語であるような、悪い菌であるので、徹底的に排除しなければならない。 ◆ これがキノコではなくてカビと訳してあったなら、とくになにも思わないのだが、どうしてだか、キノコがこのように悪者として描写されているときにはいつも軽い反発を覚える。あんなにおいしいのに。ワタシが好んで食べているのが、「腐敗や堕落」だとは。とほほ。 ◆ ちなみに、ニーチェのドイツ語原文は『人間的な、あまりにも人間的な』(Menschliches, Allzumenschliches)中のこれ。 ◇ 468. Unschuldige Corruption. - In allen Instituten, in welche nicht die scharfe Luft der öffentlichen Kritik hineinweht, wächst eine unschuldige Corruption auf, wie ein Pilz (also zum Beispiel in gelehrten Körperschaften und Senaten). ◆ 風はルフトハンザ航空の「Luft」で、キノコは「Pilz」か。あとはしらない。「足のキノコ」(Fusspilz)は水虫。ドイツ生活者による「お口にキノコ」というブログ記事がおもしろい。 |
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