MEMORANDUM

  ゴメ

  ゴメゴメと声高らかに歌う子も
  歌わるるゴメも共に可愛や

  違星北斗 『北斗帖』(青空文庫

◆ 2007年9月7日、利尻島の鴛泊フェリーターミナルの売店で売られていた「ごめちゃん」のぬいぐるみ。1500円。

〔石狩市:市鳥《カモメ(ゴメ)》〕 カモメは、魚の群れを追って海上を優美な姿で群れ飛ぶ海鳥です。80キロメートルにも及ぶ美しい海岸線を持つ私たちのまちでは、一年中この白く輝きながら飛ぶ数種類のカモメの姿を目にすることができます。漁師達は、カモメ(類)のことを親しみを込めてゴメと呼びます。ニシン漁の盛んだった頃は、歌にあるように、ゴメが鳴き騒ぐ場所を目印にして網をかけたといわれています。
www.city.ishikari.hokkaido.jp/content/000003762.doc

◆ ゴメとは北海道の浜言葉でカモメのこと。そう書いても間違いではなさそうだが、カモメにもいろいろな種類がいるので、そこまで考え始めるとよくわからなくなる。

◇ 「鴎が凄いね」と私が言うと、
「鴎じゃないわ。海猫よ。猫みたいな鳴き声じゃないの」姉は高飛車に言う。
「あれはゴメって言うんだ」
 網元の息子が振り返って言った。
「ゴメ? 海猫じゃないの」と不服そうな姉。
「増毛では、海猫のことをゴメって言うんだ」
「ほら、やっぱり海猫じゃないの」
 姉は低い鼻を反り返らせて威張る。
 網元の息子は続ける。
「増毛という町の名前の由来は、アイヌ語のマシュケという言葉からきてるんだ。鴎の多いところ、という意味なんだと」
「ほら、鴎じゃないか」と私は姉を肘でつつく。姉の鼻がまた低くなる。
「ゴメも鴎の一種だから、二人とも間違ってないよ」と息子が笑う。

なかにし礼 『兄弟』(文春文庫,p.71-72)

◆ なかにし礼はゴメをウミネコのことだと考えているようで、「石狩挽歌」の出だしの「海猫」も「ごめ」と歌われる。

♪ 海猫(ごめ)が鳴くから ニシンが来ると
  赤い筒袖(つっぽ)の ヤン衆がさわぐ

  北原ミレイ 「石狩挽歌」(作詞:なかにし礼,作曲・浜圭介)

◆ ネット上で「ゴメ(ウミネコ)」と書かれた紀行文も多く目にしたが、ほとんどが「石狩挽歌」の影響によるものではないかと思う。

〔アクティブレンジャー日記(北海道地区・賀勢朗子 )〕 稚内市周辺では夏の間では、ウミネコやオオセグロカモメが多く見られるのですが、冬期には主にオオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ミツユビカモメが見られるようになります。体の配色パターンが似通っていて識別しづらいからか、港周辺ではあまりに普通に見られるためか、一緒くたに「ゴメ」と呼ばれているカモメ類はちょっとかわいそうです。
hokkaido.env.go.jp/blog/article.php?blog_id=321

◆ ネット上で見たかぎりでは、ウミネコを含めたカモメの類はみな「一緒くたに」ゴメと呼ぶのが一般的であるような気がする。ゴメとはアイヌ語でカモメのことだと書いてあるサイトもあったが、アイヌ語ではなさそうだ。

◇ カモメが訛って「カゴメ」、さらに縮めて「ゴメ」。
hougen.atok.com/hokkaido/db/

◆ もっとも、

◇ 和名は幼鳥の斑紋が籠の目(かごめ→カモメ)のように見える事が由来とされる。
ja.wikipedia.org/wiki/カモメ

◆ という説もある。いずれにしても、カゴメ(カモメ)がゴメになったのだろう。

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