MEMORANDUM

  荒川区の公衆便所

◆ 東京スポーツの 《「公衆便所」は女性蔑視?》という記事(一部省略)。

〔東京スポーツ:2010年03月04日〕  日本が誇る世界のアスリート北島康介の出身地として知られる東京・荒川区で、なんとも珍妙な「トイレ論争」が勃発、関係者は大マジで激論を戦わせている。「公衆便所」の4文字が不潔なイメージだとして、呼称を「公衆トイレ」に変更する条例案が提出されたのが事の発端。紛糾する区議会では、アングラな女性蔑視用語が飛び出すトンデモ事態にまで発展している。
 「便所は便という(不潔な)イメージで、語感も悪い。トイレの方が清潔感やキレイな状況が、イメージできるのではないか」と区側が公衆便所を公衆トイレに統一表記する条例の改正案を先ごろ提出した。
 区内の公園や道路わきなどにある看板や案内をすべてトイレへ書き換えるのはもちろん、条例の公文書でも「便所」の2文字を消すことで根本からイメージ脱却を図るというのだ。
 なるほど!と思えなくもない。だが、これに対し複数の区議からは「トイレと言い換えれば、カッコよくてハイカラというのは、自虐的だ。便所が便所で何が悪い!」との意見や「区が清掃を怠った罪を“便所”という日本語に押し付けている」と反対意見が続出したから、区側もさぞ驚いたに違いない。
 想定外の追及の嵐に、シドロモドロとなってしまった区側。なんと「公衆便所は女性蔑視の差別用語でもある。便所の“じょ”を女に変える隠語がある」と、何ともそぐわないとしか言いようのない例まで挙げたものだから、火に油。さらなる紛糾を招く結果になってしまった。
 貞操観念が低く“ヤリマン”などと言われてしまう女性や、性欲処理目的の環境に置かれた女性に対して、不特定多数の人が利用する公衆便所に引き合いに出し“公衆便女”とやゆするとんでもない差別言葉は、確かにある。とはいえ、区議会という公の場で、引っ張り出すのは“いかがなものか”と、糾弾したのは呼称変更反対派の浅川喜文区議だ。「(公衆便女だなんて)くだらないことを言うのはナンセンスを通り越して、恥の上塗りというか馬脚を現した」

www.tokyo-sports.co.jp/hamidashi.php?hid=7355

◆ 「東スポ」とはいえ、いろいろと(内容も文章も)おもしろい。まず、荒川区の「枕詞」として「日本が誇る世界のアスリート北島康介の出身地として知られる」か、なるほど。たしかに、

◇ 荒川区で真っ先に思い浮かぶものがありません。「荒川区といえば○○○」というものを作ることが大事なのでは
sangyo.city.arakawa.tokyo.jp/kankondankai/kankou/pdf3/k5.pdf

◆ という意見もあって、そういえばそうだな、と思え、「世界の北島」が生まれなかったら、冒頭の文章はどうなっていたのかが気になりもする。

◇ 荒川区の観光資源といえば、あらかわ遊園、都電、日暮里繊維街等である。
sangyo.city.arakawa.tokyo.jp/kankondankai/kankou/gijiroku2.htm

◆ ううん、なんとも地味である。ということであれば、やはりしばらくは「世界の北島」に頼っておくのが無難というものだろうか(有効期限はいつまでだろう)。架空の人物でよければ、「巨人の星」の星一家が住んでいた長屋は荒川区内という設定らしい。永遠に生き続けることを宿命づけられた星一徹・飛雄馬親子のほうが、生身の人間よりは評価が安定しているように思えるけれども、これもどうだかわからない。すでに有効期限が切れているかもしれない。

◇ アニメ版において星一徹宛ての郵便物に「荒川区町屋9-16」という宛て先が示されていた。ただし、町屋は8丁目までしかなく、9-16は架空の地。泪橋も飛雄馬親子のランニングシーンに登場する。
ja.wikipedia.org/wiki/荒川区

◆ 町屋からは都電荒川線に乗って終点の三ノ輪橋電停で降り、浄閑寺あたりを抜けてぶらぶら歩けば、15分ほどで、泪橋交差点に着く。泪橋といえば、「あしたのジョー」にも登場するが(というか、こちらのほうが有名だが)、とうの昔に橋はなく、明治通りの交差点名としてのみその名を残す。岡林信康の「山谷ブルース」で知られる日雇い労働者の街、山谷はこの辺り。

◇ 泪橋(台東区・荒川区境)はかつて江戸の境界で、近くに小塚原刑場や遊女の投込み寺(浄閑寺)があった。また、山谷地域西南部の近隣には、ソープランド街である吉原(ここも1966年の住居表示制度の実施により、正式地名としては消滅。現在は台東区千束の一部)がある。
ja.wikipedia.org/wiki/山谷 (東京都)

◆ 荒川区から泪橋を渡って台東区に入り、しばらく歩くと吉原遊郭の入口である大門(おおもん)に出る。こちらも、とうの昔に門はない。荒川区の公衆便所のハナシのはずだったが、なぜか台東区に来てしまった。おっと、こんなところに公衆便所が! ついでながら、この「新吉原大門前公衆便所」の「新」というのは、この台東区千束の吉原遊郭が「新吉原」とも呼ばれるからで(江戸時代に日本橋人形町の旧吉原から移転)、なにも吉原大門前のどこかに旧い公衆便所があったわけではない(と思う)。

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