◇ 〔神戸新聞:2010/01/23 12:00〕 17日に兵庫県などが主催した「1・17のつどい-阪神・淡路大震災15周年追悼式典」で、祝い事に使われる印象もある「周年」という言葉について、一部の参加者から「遺族感情にそぐわない」との疑問の声が出ている。これまでも毎年「周年」を使っている県は「周忌と同じ意味で、ほかの災害での式典にも使われている」と説明している。(森本尚樹、井関徹)
震災の翌年から、県は式典や関連事業の名前などに「周年」を使ってきた。広辞苑によると、周年は「(1)まる1年、転じて一周忌のこと(2)ある時から数えて過ぎた年数」の意。県防災企画課は「追悼の場に相いれない言葉ではない」とする。また、雲仙・普賢岳噴火災害や新潟県中越地震の追悼式、北海道南西沖地震の鎮魂行事でも「周年」が使われている。
だが、一般的には「創業50周年」「結婚10周年」など祝い事に使う印象が強い。尼崎JR脱線事故では、追悼式典の名称に「周年」や「慰霊祭」を使うことに、一部の遺族が抵抗感を示し、JR西日本は年数の付かない「追悼慰霊式」とした。
17日の県の式典に参加した医師(68)=神戸市=も「遺族に『お子さんを亡くして15周年ですね』とは間違っても言わないはずだ」と批判する。
遺族の意見はどうか。今年の式典で遺族代表としてあいさつした松浦潔さん(56)=神戸市=は「周り巡る、という意味に受け取っており、違和感はない」と話す。
一方で、2003年の式典であいさつした会社員(49)=さいたま市=は「記念行事を表しているようで、とても違和感がある」と指摘する。
神戸市の式典は「震災15年追悼の集い」の名称で「周年」は使わない。04年に市の集いで遺族代表となった中島喜一さん(62)=同市=は「めでたいときの言葉の周年を使うのは『あり得ない』と、ずっと思っていた。遺族は言葉ひとつでも傷を深めることがある。私たちの目線では使わない言葉」と語った。
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◆ 辞書を引いてもわからないことはたくさんある、ということの例として。それでも、辞書をひかないよりは引いたほうがいいとは思う。