◆ 自分の経験したことでなくても、小説を読みながら、映画を観ながら、音楽を聴きながら、リアルに感じる、ということがある。最近では、ある殺人事件をあつかったノンフィクションの一節が、たまらなくリアルだ、と思った。娘を殺された母親が娘の遺体解剖が終わるのを待合室で待っている。
◇ 翌日は、東大で遺体解剖だった。
O・Mさんの遺体が日本医科大学付属病院から着いたのは昼ごろだったが、終わったときには五、六時間ほど過ぎていたという。その日は兄も一緒だった。待合室に入ると、もうひと組の夫婦がいた。互いに目礼をしただけで、どちらも押し黙ったまま終わるのを待っていた。途中、学生らしい若い男が「遅くなります」と教えに来た。それを聞いた母親は、とっさに「そんなに遅くなるんなら、M子に連絡しないと」と思ったという。
佐藤幹夫 『自閉症裁判』(朝日文庫,p.75)
◆ 雨が降っている。雨の日には元気が出る歌が聴きたい。
♪ 窓辺にもたれ
夢の一つ一つを
消してゆくのは つらいけど
若すぎて何だか解らなかったことが
リアルに感じてしまうこの頃さ
佐野元春 「SOMEDAY」(作詞:佐野元春,1982)
◆ ふたつの引用をリアルということばでむりやりにつなげてはみたが、しっくりとこない。ひとつめの言葉がどうにも重過ぎる。選曲を誤ったようだ。でも、そろそろ仕事に行かなきゃ。外はリアルに雨が降っているだろう。