MEMORANDUM

  粉雪その2

◆ 東京はいま、雨が降っている。けして雪ではない。文庫本を読みながら、ときおり、雨音を聞いている。

◇ 気温がゆるんで霙(みぞれ)まじりの雨が降る日もあったが、やがて牡丹雪(ぼたんゆき)が舞い、それも粉雪に変った。かれらは戸外に出ることもせずに炉の近くで身を寄せ合ってすごしていた。
吉村昭 『羆嵐』(新潮文庫,p.12)

◆ 粉雪といえば、以前コブクロの歌詞のことをしつこく書いていた時期があったが、そのときに「粉雪」という記事で、コブクロの「NOTE」とレミオロメンの「粉雪」を取り上げて、歌詞のなかの「粉雪」の使い方がおかしいのではというハナシを書いた。あたりまえといえばあたりまえだが、小説家は「粉雪」をおかしく使わない。それを確認してほっとした。こんなのもある。

◇  青空に粉雪が舞っていた。冬の太陽を受けた小さな破片が、白一色に埋もれた大地にきらきら光りながら落ちてくる。銀色にそそり立つ山嶺も、山々に囲まれた盆地の村も、粉雪を浴びて明るく輝いている。
 空の涙みたいだ。

坂東真砂子 『山妣』(新潮文庫

◆ 雨だって「空の涙」だろう、というのは負け惜しみ。

関連記事:

このページの URL : 
Trackback URL : 

POST A COMMENT




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)