MEMORANDUM

  クマとニンゲン

◆ また前置きが長くなると困るので、一枚の写真を先に掲げておこう。テルメ金沢の写真。剥製のシロクマ、手前に仮眠室からあぶれて背もたれのない椅子にだらしなく寝ている男、その横にすでに起きて新聞を読む男。この写真が、さいきんの「お気に入り」の一枚。見ていて飽きない。見ているあいだにいろんなことがアマタをよぎる。たとえば、

◇ 草がこいの小舎(こや)に住むかれらは、穴居生活をしてい時代の人間たちと大差ない生活をしている。それは、地上に棲息する動物の一種属として、自然の変化に容赦なくさらされた生活であった。穴居していた人間たちは、強大な力をもつ肉食獣の食欲を満たす存在にすぎなかったはずである。が、生命を守る手段として刀槍を手にし、遂には銃器を得ることによって、獣類と対抗し打ち克(か)つことができるようになった。
吉村昭 『羆嵐』(新潮文庫,p.43-44)

◆ これは、いま読んでいる吉村昭の『羆嵐(くまあらし)』という小説の一節だが、上の写真を見ながら、「よくもまあ、クマの目の前で、(銃も持たずに)のんびりと寝ていられるものだなあ」と思ったり、男の寝相に「ニンゲンもどうぶつなのだなあ」と感心したり。その他いろいろ。

◆ 一枚の写真に、たとえば、そのようなことを思ったりする。この「たとえば」が多ければ多いほど、「いい写真だなあ」と思うのだと思う。

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