◆ 先に引用したアナトール・フランス 「回復期」の一文に、 ◇ 熱病の種をまく手も、毎晩やってきて子供たちの目に睡気を催させる、砂をいっぱい握りしめたあの老人の手と同じように、人の目にはとまりません。 ◇ Le bras qui sème la fièvre est invisible comme la main, pleine de sable, du vieillard qui vient, chaque soir, verser le sommeil dans les yeux des enfants. ◆ というのがあったが、「毎晩やってきて子供たちの目に睡気を催させる、砂をいっぱい握りしめたあの老人」というのは、西洋のおとぎ話の登場人物。日本では「砂男」として知られているが、これはドイツ語 Sandmann から。 ◇ ザントマン(Sandmann)とは、ドイツの民間伝承に登場する睡魔。/ 英語読みでサンドマン(Sandman)、また砂男ともいう。姿の見えない妖精だが、一般には砂の入った大きな袋を背負った老人の姿であるとされる。/ 彼が背負っている袋の中には眠気を誘う魔法の砂が詰まっており、夜更けになると、ザントマンは人々の目の中に投げ込む。すると、人々は目が開けられなくなり、眠らずにはいられなくなってしまうという。/ 古くからドイツでは、夜更かしをする子供に「ザントマンがやってくるぞ」と脅して寝かしつける習慣があった。/ E.T.A.ホフマンの怪奇小説『砂男』(Der Sandmann)などの題材としても知られる。 ◆ フランス語では marchand de sable(砂売り)。堀江敏幸に「砂売りが通る」(『熊の敷石』)という短篇があるらしいので、そのうち読んでみたい。 |
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