MEMORANDUM

  盛者必哀

◆ 墓地のブロック塀に書かれた落書き。雨でブロックが濡れていたので、落書きがあるとわかったが、乾いているときには、読むのに苦労するのではないかと思う。そんなやや控えめな落書きとして書かれている文字はというと、「盛者必哀」。そのあとに「理」の文字が見え、その下には「因果応報」と書かれているように思える。もちろん、だれが書いたのかは知らない。鋭いナイフのごとくに書かれた「必」(および「哀」)の字の「ノ」の部分に、「夜露死苦」「喧嘩上等」「唯我独尊」などといった四字熟語を好むひとたちに共通するものを感じないではないが、総体として丁寧に書かれた文字を見ると、そんなにトガったひとではなさそうな気もする。

◆ それにしても、「盛者必哀」とは! 「盛者」であったためしがないので、よくわからないが、案外そんなものかもしれない。いつだって盛者は哀しい・・・

◆ など、多少の皮肉を書きつけているまさにそのとき、不意打ちのように、哀しいのはほかならぬ自分であることに気づかされた。「盛者必哀」ならぬ「盛者必衰」をパソコンで漢字変換しようとしたところが、変換されない。なんと入力したかというと、「せいじゃひっすい」。えっ、違うの?

◇ 昨日のことです。メールを書いていた私は「せいじゃひっすい」とタイプしました。しかし、期待した変換結果は得られませんでした。嫁に聞いたところ「じょうしゃひっすい(盛者必衰)」のようですね、お恥ずかしい。
d.hatena.ne.jp/turing_pattern/20080916/1221571613

◇ 昨夜のフジTVのネプリーグで盛者必衰の読みを初めて知った。恥ずかしながら吾輩は「せいじゃひっすい」と思っていたし平気で人に「せいじゃひっすい」と話していた。
また、それで通じていた。もし会話中に「じょうしゃひっすい」と言われたら無知な吾輩は乗車したら必ず眠ってしまうのだと勘違いするだろう。

qin.seesaa.net/article/27434644.html

◇ それよりも「盛者必衰」が「じょうしゃひっすい」と読むと知って今さら驚いた.それまで「せいじゃひっすい」と読んでたからだ.うーん,覚えることはまだまだ多い…
ueno.cocolog-nifty.com/ueno/2005/01/post_8.html

◇ この間まで『盛者必衰』を、『じょうしゃひっすい』ではなく、『せいじゃひっすい』と読んでいたと言えば、×××がどのくらい低レベルな人間なのか分かることでしょう((((((〃 ̄З ̄)ノ ウヒヒヒヒ♪
blog.livedoor.jp/clodius/archives/12695975.html

◆ とはいえ、「せいじゃ」と読む慣わしがないことはないようで、

◇ 仏教語は、普通呉音で「じゃうしゃ」と読みます。「しゃうじゃ」「しゃうしゃ」「じゃうじゃ」とも。百二十句本は、漢音で「せいじゃ」と読んでいます。
www.hikoshima.com/bbs/heike/100587.html

◆ のだそうだ。百二十句本(国会図書館本)で、平家物語の冒頭を読むと、

◇ 祇園精舎(ぎをんしやうじや)の鐘(かね)の声(こゑ)、諸行無常(しよぎやうむじやう)の響(ひびき)有(あ)り。沙羅双樹(しやらさうじゆ)の花の色、盛者必衰(せいじやひつすい)の理(ことわり)をあらはす。奢(おご)れる者も久(ひさ)しからず、唯(ただ)春の夜の夢の如(ごと)し。たけき者も遂(つひ)には亡(ほろ)びぬ、偏(ひとへ)に風の前(まへ)の塵(ちり)に同じ。
www.j-texts.com/heike/120k/h120k01.html

◆ 墓地のブロック塀の向こう側には、卒塔婆が見える。墓地のなかにいるひとたちへ向けられた「盛者必哀」および「因果応報」のコトバ。だれか特定の故人に個人的な恨みつらみがあったのでなければ、それはそれで、この場所に似つかわしい落書きなような気がしないでもない。

関連記事:

このページの URL : 
Trackback URL : 

POST A COMMENT




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)