◇ かつて、私が少年のころには細い通路を挟んで、小規模の何軒もの魚屋や干物屋、乾物屋、雑貨屋がズラリと並ぶ“公設市場”があった。今ではセルフサービス方式のスーパーマーケットに移り変わって、公設市場は姿を消しつつあるが、私は韓国の市場を歩きながら、昔、母親に手を引かれて迷路のような通路を歩いた公設市場の想い出を甦らせていた。 ◆ 公設市場というコトバに懐かしさを覚えた。まだ「公設」などというコトバも漢字も知らなかったこどもにとって、駅前にあったその市場は、「コウセツイチバ」という意味をもたない音の連なりとしてのみ記憶されていた。つまりは「コウセツイチバ」を固有名詞だと思っていたのだ。市場内は薄暗く、すぐにも迷子になりそうで、こども心には、ちょっと恐ろしい場所だった。 ◇ 1938(昭和13)年には、安朱南屋敷町に京都市山科公設市場が設営され、食料品・薪炭・雑貨洋品などが販売されにぎわった。こうして駅前繁華街としての下地ができて、現在のラクトや三条商店街など山科駅前商店街の発展へとつながっている。 ◇ 1992年(平成4)12・31 山科区公設小売市場この日をもって廃止 ◇ その頃は駅前に大丸はなく、公設市場だったんですよねー。 ◆ もちろん、「コウセツイチバ」は固有名詞ではなくて、かつてはあちこちにあったのだった。 ◇ 42年、最多の55か所を数えた大阪市の市場も徐々に減り、80年代後半からスーパーへの衣替えも増えた。「役割を終えた」と市が制度を撤廃したのは2003年。他の政令市も傾向は同様で、「地域に根ざしているから」という名古屋や神戸で続くくらいだ。 ◆ いまでも、沖縄の公設市場(那覇市の牧志公設市場など)は活気があるらしいが、行ったことはない。ネットで「公設市場」を調べて、そんな気がしただけ。 ◆ 「公設」というコトバ自体が、いまではほとんど死語だろう。市立でも公立でもなくて、公設。微妙な意味の違いもあるのだろうけど、よくは知らない。 ◇ 2008年9月11日午前、自民党の杉村太蔵衆院議員(29)の公設秘書の男性(25)が、入院中の病院で死亡した。男性は08年8月28日、川崎市の自宅でドアノブにひもを引っかけて首をつっているのを家族に発見された。意識不明の重体で、入院して治療中だった。発見された状況から自殺を図ったと見られている。 ◆ あるいは、死語と書いたのが、いけなかっただろうか? |
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