MEMORANDUM

  風になりたい

◇ 風邪をひく。 / 六年ぶりくらいに、お医者さんに行く。 / はりきって、よそゆきのブラジャーをしていく。迷ったすえ、パンツもよそゆきのにする。
川上弘美 『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』 (平凡社,p.106-107)

◆ 検索エンジンでパンツとブラジャーをキーワードにこちらを訪問された方には申し訳ないけれども、残念ながら、パンツとブラジャーのはなしではない。

◇ 風邪をひく。六年ぶりくらいに、お医者さんに行く。

◆ こんな短い文章から、あれこれ考える。医者に行くのが6年ぶりとはよほど健康なんだなあとか、それとも医者がよほどキライなのかなあとか、でも風邪をひいたくらいで医者に行くんだなあとか、6年間で一度も風邪をひかなかったのかなあとか、それともよっぽどひどい風邪だったのかなあとか、あれこれ。

◆ ワタシは風邪をひいたくらいでは医者には行かない。そもそもあまり風邪をひかない。というようなことを何度も自慢気に書いてきた記憶があるが、このところトシのせいか体調がすぐれない日が続いて、「風邪気味なもので」 と言うことが増えた。

◆ たとえば、さいきん頻繁に頭が痛くなる。ズキズキと痛む。世に頭痛持ちのひとは多いというはなしは聞いたことがあっても、これまでワタシは頭痛というコトバの意味さえよく理解してはいなかったらしい。ああ、これが頭痛というものなのか、と妙な感心をしている。

◆ けれど頭痛が続くと、感心しているばかりではすまなくなって、先日くすり屋さんに行った。「頭痛に効くお薬ありませんか?」 「ほかに症状は?」、ほかにべつだん症状はなかったが 「ええと、のどが痛いです」 と答える(のどが痛いのはタバコの吸いすぎだろう)。すると、くすり屋さんは満足そうに 「風邪ですね」 とかぜ薬を出してくれる。ワタシもこのなりゆきに満足して、かぜ薬を買って帰る。ああ、風邪でよかった。

◆ 医者に行くのは怖い。多少のことなら風邪ということにしておけばいい。もしかしたら、とんでもない病がワタシを蝕んでいるかもしれぬ、ふとそんな恐怖におそわれるときには、いつでも風邪ということにして・・・。

 ♪ 天国じゃなくても 楽園じゃなくても
 あなたに会えた幸せ 感じて風になりたい

 THE BOOM 「風になりたい」 (作詞:宮沢和史)

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