◆ ちかごろは納豆だのなんだのとマスメディアがせっせと迷信の大量生産に精を出しているようだが、迷信といえば、こんな迷信がある。 ◇ 【三の酉まである年は火事が多い】 ◆ 「三の酉ってなに?」 というひとも多いだろうから、とりあえず辞書を引く(「酉の市」)。 ◇ 一一月の酉の日に行われる鷲(おおとり)神社の祭礼に立つ市。最初の酉の日を一の酉、以下二の酉・三の酉と呼ぶ。金銀を掻き集めるというところから熊手が縁起物として売られる。東京浅草の鷲神社のものが有名。とりのまち。お酉様。三の酉まである年は火事が多いといわれる。 ◇ 11月の酉の日に行われる鷲(おおとり)神社(大鳥神社)の祭り。年により2回または3回あり、順に一の酉・二の酉・三の酉とよぶ。東京都台東区千束の鷲神社の祭りが有名で、縁起物の熊手などを売る露店が立ち並んでにぎわう。お酉さま。とりのまち。 ◆ 酉の市は主に関東の行事であるらしい。「三の酉まである年は火事が多い」 ということにかんして、台東区千束の 《鷲神社》 の公式サイトの説明によれば、 ◇ 三の酉の年は火事が多いといわれますが、これは地方などに宵に鳴かぬ鶏が鳴くと「火事が出る」といわれたことから出た俗信です。鶏は神の使いであるとされ「時」を知るために飼われました。三の酉の頃になると次第に寒さを増し、火を使う機会も増えることから火に対する戒め、慎みからいわれたのでしょう。 ◆ なるほどそうなのか、というわけにはいかなくて、これではよくわからない。「宵に鳴かぬ鶏が鳴く」 ことがあったとして、それが11月に酉の日が3回あることにどう関係するのだろう? またべつの説明もある。 ◇ というのは、お酉さまの参詣の帰りに、男性が吉原に寄ることが多く、留守をあずかる女性としては、何とかして亭主などを家に引きもどさなければなりません。まして、3回もお酉さまがあったのではたまったものではありませんから、三の酉のあるときは 「火事が多い」 とか 「吉原遊廓に異変が起こる」 という俗信を作って、男性の足を引き止めようとしたのだろうと考えられます。 ◆ この解説は 《東京消防庁》 のサイトから。これもまた、いまひとつ腑に落ちないが、「実際に、三の酉のときに火事が増えたという記録もありません」 との記述がいかにも消防庁のページらしい。そもそも、火事が増えるもなにも、三の酉まである年というのが、珍しいことでもなんでもない。 ◇ 通常2回なのですが、暦の関係で3回(三の酉)ある年があります。で、この三の酉がある年は火事が多いなどと昔聞いたことがあります。 ◇ 通常一の酉、二の酉までなのだが、年によっては三の酉まであるらしい。「三の酉まである年は火事が多いらしいですよ」と彼が言う。 ◆ 「通常」 と書くことで、三の酉まである年がいかにも例外であるかのように思えるけれども、そうではなくて、ほぼ2年に1度は11月中に酉の日が3回ある。算数は苦手なので、詳しい計算は省略するが、100年に1度の閏年の例外を考慮しないとすると、十二支のひとつである酉の日は16年のサイクルで11月の同じ日にめぐってくることになって、その16年のうち、二の酉までの年が8回、三の酉まである年が8回。つまり、2分の1の確率なのだから、「三の酉まである年は火事が多い」 というのは 「2年のうちの1年は火事が多い」 ということと変わりがない。もしかしたら、そういうこともあるのではないか? といわれてしまえば、それまでなのだが・・・。 |
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