◆ 新月というコトバが気になって、そのことを書いたら、おともだちの rororo さんの 「新月といえばラマダン?」 というささやきが聞こえたので、ラマダンの新月について。またまた、《Yahoo!知恵袋》 の質問から。 ◇ イスラム教のラマダン(断食月)は、新月を確認してから始まる(終わるときも同じ)、と聞いたのですが、それって個人個人が確認するわけじゃないですよね? やはり大きな教会の聖職者とかが確認するんですか? また、日本に住むイスラム教徒の場合、ラマダンに入ったかどうか、どこに確認してるんでしょう? やはり、自分の国の大使館とかですか? ◆ その一回答。 ◇ 日本では、東京・代々木のイスラミックセンター・ジャパンがいちおうの統一見解を出しています。ただし、去年のラマダン明けでは、日本の大部分が曇っていて、月の有る無しが確認できず、最も近いイスラム国・マレーシアの大使館に問い合わせていました。結局、マレーシア本国から「ラマダン明けはまだ」という見解が届いて、思っていたより1日伸ばしたところが多かったようです。 ◆ イスラム社会で用いられている暦はヒジュラ暦と呼ばれる太陰暦。 ◇ イスラーム暦の一日は日没に始まって日没に終る二十四時間から成り、各月は新月の出る日を第一目とします。 ◆ だから、第9番目のラマダン月の開始も、「新月」 を目で見て決める。 ◇ 世界のイスラム教国ごとにイスラム学者や天文学者らがイスラム暦9月の新月を確認し、イスラム教最高権威が断食月入りを宣言する。このため、国によって開始がずれる場合がある。天候により新月が確認できない場合、サウジアラビアの決定に従うが、サウジも悪天候なら天文学上の計算に従う慣例だ。 ◇ ラマダンは、イスラム教の開祖の預言者ムハンマドがメッカからメディナに移住した西暦622年を元年とする陰暦(ヒジュラ暦)の第9の月にあたり、毎年11日ほど早くなる。始まりは各国のイスラム機関が月を見て決定し、今年はおおむね9月23日か24日に始まった。イラクではスンニ派の開始日は23日でシーア派は24日だった。 ◇ イスラム教のラマダンは、毎年決まった日ではなく、新月が見えた翌日から一ヶ月間行うものだと知りました。 / その開始日を決めるため、日本在住のイスラム教徒たちが都庁の展望台に上って新月が見えるか目を凝らす様子を、昨日のTVで見ました。あいにく曇り空で月が見えなかったので、福岡のイスラム教徒に空を見てもらいましたが、やはり見つからなかったと携帯で連絡を取り合っていました。 / さらに、日本と経度が近いイスラム国のマレーシアに国際電話をして月の出具合を聞いていましたが、やはりわからないとのことで、最終的にはラマダン開始は明日ではなく明後日から、ということに決まったようでした。 ◇ ラマダンはイスラム暦9月。イスラム暦は月が基準となっているので太陽暦よりも1ヵ月が短く、ラマダンも毎年少しずつずれていきます。1ヶ月の始まりは新月の日。これは実際に目視で確認されます。従ってラマダンの開始もこの 「月見判定委員会(?)」 が新月を確認の上、アナウンスします。 ◆ このように、あちこちで、あたりまえのように 「新月を見る」 と書かれているけれども、新月というコトバを天文学用語として理解しているひとにとっては、新月とは見えない月(朔)のことであるから、見えない月が見えるわけがない。だから、少々まわりくどい言葉づかいになる。 ◇ イスラーム暦では、新月のあとに月が最初に肉眼で観察された日から新しい月が始まることになっており、実際に観察されるまではラマダン月が始まったとか終ったとかは公式に言えないのである。 ◆ これを書いたのは、やはりコトバの厳密な使用を要求される職業である大学の先生だった。つぎはアメリカ海軍天文台(United States Naval Observatory)のサイトから。 ◇ The Islamic calendar is based on lunar months, which begin when the thin crescent Moon is actually sighted in the western sky after sunset within a day or so after New Moon. ◆ 「新月(New Moon)」が、朔ではなくて、朔のあと初めて見える月のことを指すのであったなら、この文章は、 ◇ The Islamic calendar is based on lunar months, which begin with the New Moon. ◆ と書けばすんだはず。つづきの文章もおもしろいので、もう少し。 ◇ The visibility of the lunar crescent as a function of the Moon's "age" - the time counted from New Moon - is obviously of great importance to Muslims. The date and time of each New Moon can be computed exactly but the time that the Moon first becomes visible after the New Moon depends on many factors and cannot be predicted with certainty. In the first two days after New Moon, the young crescent Moon appears very low in the western sky after sunset, and must be viewed through bright twilight. It sets shortly after sunset. The sighting of the lunar crescent within one day of New Moon is usually difficult. The crescent at this time is quite thin, has a low surface brightness, and can easily be lost in the twilight. Generally, the lunar crescent will become visible to suitably-located, experienced observers with good sky conditions about one day after New Moon. However, the time that the crescent actually becomes visible varies quite a bit from one month to another. The record for an early sighting of a lunar crescent, with a telescope, is 12.1 hours after New Moon; for naked-eye sightings, the record is 15.5 hours from New Moon. These are exceptional observations and crescent sightings this early in the lunar month should not be expected as the norm. For Islamic calendar purposes, the sighting must be made with the unaided eye. ◆ 朔のあと、はじめて月が見えるまでの所要時間の最短記録は、望遠鏡で12.1時間、肉眼で15.5時間だそうだ。その月はどれほどか細い月なのだろうか? |
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