◆ ガレージのシャッターに、こんな注意書き。「駐車禁止」 が 「馬車 車 林/止 止」。4つの漢字に2つの間違い。ちょっと珍しいかと思ったら、そうでもないらしい。〔こういった独自な文字をパソコンで表示するには、左右に2つ(以上)の部分が並んで構成される漢字(「駐」)なら、それぞれの部分を並べておけば(「馬車」)、やや横に間延びしてしまうにしても、読めないことはないだろうが、上下に2つ(以上)の部分が並んで構成される漢字(「禁」)の場合は、ちょっとやっかいなので、ここでは便宜的に、分数の 「2分の1」 を 「1/2」 と表記するような仕方で、「/」 を使用して、「/」 の左に上の部分、「/」 の右に下の部分を置くことにする。以下の引用も同様。〕
◇ 街中の看板や貼り紙のたぐいには、第三者の行動を抑止するためのものが少なくない。その中でも、「馬主 車」 が 「車主 車」、「林/示 止」 が 「林/止 止」 と書かれていることがしばしばある。「駐車」 するのは確かに今や馬ではなく車だからと納得できなくもないが、多くは単に次に書く 「車」 が先走って現れたものであろう。「馬車 車」 と書かれることもしばしばあり、一枚の地図にこれと 「車馬 車」 とが同じ筆跡で書かれていたのを見たこともある。「林/止」 は 「示」 を次の、しかも 「シ」 と日本語で同音の漢字を代入させてしまったものであり、これは熟語でなくとも現れることがある。
笹原宏之 『日本の漢字』 (岩波新書,p.73-74)
◆ 似たような例では、
◇ 現在では、「連絡」 が部首をそろえ、「車」 と似た部分をもつ 「レン」 に置き換わり 「練絡」 となりがちである。「講義」 を 「講議」 と書く学生がきわめて多い。これは 「会議」 などとの混淆も考えられるが、江戸時代の安藤昌益もそう書いている。
Ibid., p.74
◆ なにもおそれることはない。江戸時代の安藤昌益もそう書いている。