◆ 東海道ではなく中山道を(仕事で)旅した、おともだちのおタネさんがこんなコトを書いていた。
◇ 膝栗毛ってどーいう意味だよ
blog.goo.ne.jp/otane-2/e/3d5232159498bc1ce39368f2a8ed2b3f
◆ そんなことワタシに聞かれても・・・、いやべつにワタシに聞いているわけでは全然ないのだったが、
◇ わからないことは調べましょうね
◆ とおタネさんがおっしゃるので、調べてみた。
◇ 〔膝を栗毛の馬の代用とする意から〕徒歩で旅行すること。
三省堂 『大辞林 第二版』
◇ 膝を栗毛の馬の代わりにして旅をすること。徒歩で旅行すること。
小学館 『大辞泉』
◆ これではなにもわからない。と思うのだが、わかってしまうひとも多いらしい。
◇ 膝栗毛とは、自分の足を栗毛の馬の変わりに使うこと、つまり歩いて旅をすることです。
blog.goo.ne.jp/goo6223/e/fb9d34f1af22f263dac34ed96c921a14
◇ 『東海道中膝栗毛』 のことは知っていましたが、膝栗毛が自分の膝を栗毛の馬にたとえたものだなんて知りませんでした。
www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/koma_kokugo2006.html
◇ あの 『東海道中膝栗毛』 の膝栗毛は、「ポックリポックリ歩く栗毛の馬のように、自分の足で歩いて旅をする」 という意味です。
www.city.chuo.lg.jp/koho/150501/12-02.html
◆ ??? ワタシにはまったくわからない。一般的なイメージでは、馬は歩くより走るものではないか? そもそも、なぜ馬一般ではなく栗毛の馬なのか?
◇ 「栗毛」 は馬のことですが、馬に乗っての旅行(徒歩よりも費用がかかる、お金持ちの旅)ではなく、「膝」 (人間の足)で旅をする、と貧乏旅行を駄洒落っぽく言ったもの、です。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail.php?queId=7439791
◆ まず、「栗毛は馬のこと」 という説明は正確さに欠ける。栗毛とは栗毛の馬のことで、馬一般を指すのではない。さらに、上記の説明では、どこに駄洒落があるのかがさっぱりわからない。
◇ 長らく膝栗毛の意味が判らなかったのだが、これは馬の栗毛に引っかけた駄洒落なのだそうだ。栗毛の馬で旅をするのではなく、自分の膝小僧に乗っかって旅をする。とまぁ、そんな意味である。
ultegra.web.infoseek.co.jp/bic/toukaidou/kanwa_01.html
◆ これもまた、どこに駄洒落があるというのか?
栗毛とは馬のことを指すので、「膝栗毛」 とは 「自分の膝を馬として旅行する」 という意味で、徒歩旅行を洒落て言ったものである。
www5a.biglobe.ne.jp/~kota-k/new_page_19.htm
◆ この 「洒落て」 というのは、もしかすると駄洒落の意味ではなく、お洒落の意味かもしれないが・・・。では、膝栗毛のどこがオシャレか?
◆ と、ここまで似たような(ほどんど同一の)文章を引用してきて、ふと合点がいったことがある。そもそも、多くのひとにとって、栗毛というコトバはまったくなじみのないものだったのだろう。だから、栗毛が馬のことだとはじめて知って、それだけで満足して、なんとなくこの膝栗毛というコトバを理解したような気になってしまった。そういうことなのかもしれない。
◆ ふつうのひとは栗毛というコトバを聞いても、それが馬のことだとは思いもよらないのだろう。このコトバに即座に反応するのは、競馬好きのひとたちだけかもしれない。
◇ サラブレッドにおいては鹿毛、栗毛、黒鹿毛、芦毛、青鹿毛の順に多い。栃栗毛、青毛はまれで、白毛、粕鹿毛も極めてまれに認められる。
ja.wikipedia.org/wiki/馬の毛色
◆ 栗毛を知らないひとは、当然 「鹿毛(かげ)」 も知らないだろう。だから、十返舎一九の作品のタイトルが 『東海道中膝栗毛』 ではなく、『東海道中膝鹿毛』 であったとしても、もし辞書に、「膝を鹿毛の馬の代わりにして旅をすること。徒歩で旅行すること」 とあれば、それはそれで納得してしまうかもしれない。
◆ ところが、ワタシは競馬好きだから、なぜ(鹿毛でも芦毛でもなく)栗毛なのかがわからないかぎり、膝栗毛というコトバが理解できた気がしない。
◇ ちなみに、『ひざくりげ』 は、滑稽無類の旅行小説ですが、この題名の由来も洒落心いっぱいです。歩くときは、膝(ひざ)小僧を繰り返して行くので、膝くりとしゃれてみせ、くりを栗毛の馬にごろあわせ、あわせて膝栗毛。なんて遊び心いっぱいでしょう。
www.rakuten.co.jp/ehime-hamaya/471442/508188/
◆ なるほど、とこれを読んで初めてワタシは膝を打ったのだった。
◇ 栗毛の馬に揺られる代わりに自分の膝を馬に見立てて徒歩の旅をしよう
これは正にそのとおりなんですが、歩くという意味の 「膝を繰る」 と道中馬の 「栗毛」 とを掛けた洒落言葉とい点に御注目。繰るというのは交互かつ順次に出してゆくことです。歩く動作は左右の足を繰り出してゆくことで成立します。「膝栗毛」 という言葉の早い用例は一九が 「東海道中膝栗毛」 の初編を出した前年の享和元年(1801A.D.) 「恵比良濃梅」 に見える 「ぱっちなしの尻はしょり膝栗毛を飛ばして大磯の廓へいそぐ道すがら」 とあるのが知られています。
www.geocities.co.jp/Bookend/4373/sub5_12.htm
◆ 「膝を繰る」、「膝繰り」 というコトバがあって初めて、それを馬の栗毛と掛けた 「膝クリ毛」 というコトバが(駄)洒落として成立するのであった! たぶん、これが正解だろう。ああ、すっきりした。
◆ 最後に、せっかくだから栗毛の馬の写真でも載せようと思ったが、すぐには見あたらない。そもそも馬の毛色の違いは微妙なもので、実際に目の前で見るのならともかく、写真で正確な色合いが出せるものでもないから(こちらで時間をかけて色修正したとしても、見る側のパソコンのモニターごとにずいぶん違って見えるだろうから)、サラブレッドの毛色としては、栗毛よりも一般的な鹿毛の馬の写真で、代用することに。被写体は、ナイスナイスナイス号、東京競馬場にて。タイトルは「サラブレッドテール」。ポニーテールの洒落のつもりだが、これは洒落になっているだろうか?