◇ 植物や動物の名は 「かな書き」 にするように決められて以来、肝腎の動・植物学界を始めとして、新聞・雑誌でも、原則として 「カタカナ書き」 にする不文律ができ上り、いつの間にかそれぞれの鳥獣や草木の持つ歴史や性質がさっぱりわからなくなった。それだけではなく、舶来の種も日本固有の属も、その判別の基準が曖昧化して、多くの名詞が並列記載してある場合など、目が霞んで、まさに五里霧中の感がある。
塚本邦雄 『花名散策』 (『塚本邦雄全集 第十三巻』,ゆまに書房,p.523)
◆ と、塚本邦雄は書いて、たとえば薔薇をバラと書くようなやつはバカだ(ワタシによる要約)と言っている。
◇ 薔薇にしたところで、もともとこれは現在の野茨に近い種類を指す文字で、必ずしも固執する必要はないのだが、使い馴れた身にとっては、この二文字だけで、あの花弁が渦巻くように重なり合った華麗な花の形が、ありありと目に浮かんで来る。言わば、準・象形文字とさえ呼びたくなる例の一つだ。これを 「バラ」 と表記して何の抵抗も感じないような言語感覚の持主には、最早、他のどのような思考も、恐らく伝え得ないだろうし、伝えたいとも思わない。
Ibid., p.524
◆ ワタシもバカのひとりで動植物の名をもっぱらカタカナで書いているが、たしかにバラの花などは 「薔薇」 と漢字で表記したい気もする。とはいえ書けはしないのだが。
◆ そういえば、以前キッコーマンのCMで安田成美が、以下のようなことを言っていた。
「薔薇って書ける?あたし書けるんだよ」
「薔薇って漢字書ける?私。書けるんだよ」
「ねぇ、バラって漢字で書ける?私、書けるんだよ~」
「ねぇねぇ 『薔薇』 って書ける?あたし書けるんだよ」
「ねぇねぇ、薔薇って字書けるー?あたし、書けるんだよ~」
◆ 正確なセリフはわからない。「?」 のあとには一字分の空白を入れないのが主流? ワタシはぜひとも空けたいのだが・・・、というようなことが気になって、またハナシが逸れる。
◇ 以前、テレビCMで、確かお醤油のCMだったと思うけど、安田成美が 「薔薇って漢字書ける?私。書けるんだよ」 と夫らしき人に自慢するほほえましいシーンがありました。あの安田さんはとってもかわいくて、よおし、せめて私も書けるようにしようと覚えた字でした。でもこの漢字はゴージャスな赤いバラのイメージかもしれません。ピンクは薔薇よりバラって感じ。
e-87.tea-nifty.com/hana/2006/02/post_2b10.html
◆ こうしたイメージもひとそれぞれと言うほかないが、ワタシも 「薔薇」 にふさわしい写真を選んだら、たまたまかどうか、赤いバラになった。