MEMORANDUM

  「ナカムラさん、1円もってませんか?」

◆ 23時過ぎ、銭湯帰りにタバコを買おうと24時間営業のコンビに立ち寄った。雑誌の陳列棚のあたりには、ケイタイでおしゃべりに夢中のスーツ姿のサラリーマン。いまとなってはよくある風景。レジにはひとり先客がいて、ソフトクリーム一個を注文したらしく、レジスターには189円の表示が緑色に光っている。ところが、その先客である、いかにも冴(さ)えないといった感じの20代後半の女性は(とあからさまにトゲのある表現をするけれども)、189円の支払いをするのに、腕時計をしばし眺めて1分30秒(ワタシが腕時計をもっているとしてのハナシだが)、それでもまだ財布のなかを(いくら入っているのかは知らないが)ガチャガチャひっくり返している様子。おいおい早くしろよ、とほんの数分も待てない自分の度量のなさをほったらかしにして、憤(いきどお)る。と、背後のワタシの気配を察したのか(それともそもそも財布に188円しか入ってなかったのか)、あらぬ方に向かって大声を(だが低声で)はりあげる。

◇ 「ナカムラさん、1円もってませんか?」

◆ 誰だよナカムラって(ならびになんで1円もってないんだよ)、と訝(いぶか)るワタシの前に現れたのが、さっきのケイタイ男。なんだオマエは彼女と電話してたんじゃなかったのか? このオンナとどういう関係なんだよ? とあれこれ考える間もなく、ナカムラさんはさいわい1円をもっていたようで、無事188円プラス1円の支払いは終了し、ふたりはワタシの前から去っていったのだった。ナカムラさんとそのいかにも冴えない女性は、こんな終電に間に合わなくなるような時間に二人してどこに行くのだろうと、思ってはみたけれど、まったく大きなお世話である。おかげでワタシは1箱だけ買おうと思っていたタバコを2箱買ってしまった。まったく健康によくない。

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