◇ 小学生の頃、たいていはみんなから好かれていない同級生に向かって、「おまえなんかカビだ」 という残酷なののしり言葉がよく発せられたものだ。するとまわりから、決まって 「ふえる前に殺しちゃえ」 という合唱が起こった。 ◆ いじめられっ子にたいする侮蔑のコトバはアメリカでも日本でもそう変わりはないらしい。個人的な記憶では、高校においてさえ、同級生にカビとあだ名をつけるバカがいた。「おまえなんかカビだ」、これは英語ではどういうのか? そんなことが気になって、原文にあたってみると、 ◇ I well remember a common schoolyard taunt of my youth, often cruelly directed at unloved classmates: “There is a fungus among us” ― a cry that always inspired the ritualistic retort, “Kill it before it multiplies.” ◆ “There is a fungus among us.” カビに当たる単語が fungus で、これはどちらかというとキノコではないかと思ったけれど、よく考えてみると、カビもキノコもたいした違いはない。 ◇ ところでカビとキノコとはどう違うかというと、ほとんど似たようなもので、「類」としては同じ。唯一の違いは、カビが子実体(キノコ)を作らないのに対し、キノコが子実体を作るってことなんだ。言い方を変えれば、子実体を作るタイプのカビが一般に 「キノコ」 と呼ばれるわけ。 ◆ たいした違いはない。ないけれども、「おまえなんかカビだ」 と言われるのと 「おまえなんかキノコだ」 と言われるのとでは、受けるダメージがかなり違う(と思う)。カビとキノコではイメージがかなり違う。どちらかを選ばなければなならないとすれば、ワタシは断然、キノコと言われたい。バカにされてるのだとは知りつつも、キノコだと許せなくもない気がする。 ◆ で、“There is a fungus among us.” に戻って、この文は、読んでみると、「ファンガス・アマンガス」 とキレイな脚韻を踏んでいるのがわかる。だから、この侮蔑のコトバを日本語に置き換える際にも、やはり脚韻を踏むことにして、「あのコはキノコ」 とでもした方がいい。 |
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