MEMORANDUM

  オバケは何と鳴くか

◆ こういうハナシが好きだ。

◇ さて妖怪を何故にモウといひ始めたかについては、たわいも無いやうな話だが私の実験がある。曾て多くの青年の居る席で試みにオバケは何と鳴くかと尋ねて見たことがある。東京の児童等は全くこれを知らない。だから戯れに仲間を嚇さうとする場合に、妙な手つきをしてオバーケーといひ、もしくはわざとケーを濁つていふこともある。つまり我名を成るたけこはさうに名乗るのである。ところが或る信州の若者はこの問に対して、簡明にモウと鳴きますと答へた。丸で牛のやうだなといふと、他に鳴きやうがあらうとは思はなかつたといつた。
『柳田國男全集 第二十巻』(筑摩書房, p.282)

◆ オバケは何と鳴くかという質問自体がいいし、信州の若者の迷いのない回答の仕方もまた魅力的だ。

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