◇ 「日本の陶器会社がテエランの陶器会社から模造品を造ってくれと頼まれたので、造ってみたところが、本物より良く出来たのでテエランの陶器会社が潰れてしまったそうだ。それで造った日本もそれは気の毒なことをしたというので、今になって周章(あわ)て出したというんだが、しかし、やるんだねなかなか。一番ヨーロッパを引っ掻き廻しているのは、陶器会社かもしれないぜ。」 ◆ テエランはイランの首都テヘラン(Tehran, Teheran)。これは小説のなかのハナシだからホントかとどうかしらないけれど、ありそうなことではある。やるんだねなかなか、日本人というのは。器用で勤勉で。 ◆ こんなハナシを聞いたことがある。第二次世界大戦の日本の敗戦にともない、ソ連は多くの日本人捕虜をシベリアの収容所で強制労働に従事させた。その労働には過酷なノルマが課せられたが、勤勉な日本人はそのノルマを努力してクリアしてしまう。そうすると、さらに過酷なノルマが課せられることになるが、そのノルマをさらなる努力でまたもクリアしてしまう。やるんだねなかなか、日本人というのは。けれど、ものには限度というものがあって、ついには身体をこわして死んでしまう・・・。ああ、なんと勤勉すぎる日本人。 ◆ ノルマというコトバはもともとロシア語(Норма)。いや、ソビエト語といったほうが正確だろうか? ◇ 言い換える必要がないほど日本に定着しているロシア語にイクラやカンパなどがある。ノルマもその一つ。旧ソ連時代、一定の時間でこなすよう労働者に割り当てた仕事の基準量のことと辞書にある。 ◇ (1) 個人や工場に割り当てられた、一定時間内・期間内になすべき生産責任量。第二次大戦後、シベリア抑留者が日本に伝えた語。 ◆ ノルマのシステムは実に巧妙なものである。以下の引用は群馬県議会議長中村紀雄さんのサイトにある 《今見るシベリア強制抑留の真実》 から。 ◇ 正直で勤勉な日本人がノルマを達成すると次にはより厳しいノルマが課された。又、ノルマの達成度は、例えば、一一〇%以上が一級、その下の一〇〇%以上は二級、その下の八〇%以上は三級、それ以下は四級と評価され、それに応じて食事も差別された。 ◇ 飢えた日本人は、ノルマを超過達成して増量の食事を得ることに懸命であった。しかし、そのために体力を消耗させて倒れ、遂に死に至るものが多かった。 ◇ 日本人の中にも増食に釣られることの危険性を見抜いている者もいた。ノルマ万能の中で八〇パーセント主義を貫いたというある日本人は次のように証言している。 ◆ また、以下の引用は、毎日新聞のコラム 「経済観測」(2004年4月9日 東京朝刊)から。 ◇ シベリア抑留と強制労働に関連して、日本人にも反省すべきことがあったようだ。それは、強制労働の際に課せられたノルマ(達成すべき目標)に関してである。 ◆ とりあえず、ワタシは現在ノルマとは無縁な環境で働いていることをシアワセに思う、という間の抜けた感想しか書くことができない。 |
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