◇ 「ぼくは、もうここには戻らないようにしようと思う。そう決めたんだ」 ◆ いつもは座れるのに、雨のせいだろうか、優先座席以外に空席はなく、仕方がないので、つり革にぼんやりと身をまかせている。そんな朝のバスのなか、こんな台詞がふとどこからともなくやって来て、夜になってもなぜだか憶えているので、記しておくことにする。でも、なぜだろう? 「ここ」 とはどこだろう? どうして 「ぼく」 はそう決めたんだろう? まちがいなく自分のアタマのなかのことなのに、皆目見当がつかない。もしかすると、あれはバスで隣り合わせたひとのふぶやきだったのかもしれない。そう考えたほうが気が楽だ。まったく情けないハナシだけれども、この台詞が妙に気にかかってアタマから離れない。 |
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