◆ 先にスタンダール(本名アンリ・ベール)に触れたので、『赤と黒』(Le Rouge et le Noir)から少し。どんなハナシかというと、 ◇ 貧しい家庭教師ジュリアンは、雇い主であるレナール夫人を誘惑し、パリに出てはラ・モール公爵の秘書に雇われ、公爵の娘マチルドと恋仲になる――1830年代、混乱期のフランスの一地方とパリを舞台に、田舎出の青年ジュリアン・ソレルの恋と野望の遍歴を見事に描ききったスタンダールの傑作。 ◆ こんなハナシらしいが、以下に引用するのは、小説の終わり近く(第44章)、主人公ジュリアン・ソレルが、不倫をばらしたレナール夫人にアタマにきて発砲し、殺人未遂の罪でブタ箱に入れられ、ギロチンにかけられる日をただ待っている、そんなときにふと思いついたこと。 ◇ – «Une mouche éphémère naît à neuf heures du matin dans les grands jours d'été, pour mourir à cinq heures du soir, comment comprendrait-elle le mot nuit ? ◆ 9時から5時まで。なんだか定時で帰る公務員のようでもあるが、つづけて、 ◇ – «Donnez-lui cinq heures d'existence de plus, elle voit et comprend ce que c'est que la nuit. ◆ 早出と残業、どちらに5時間をつけるかにもよるだろうが、5時間残業してもまだ夜の10時。子どもの寝る時間だ。夜の意味を知るには、まだ足りないだろう。 ◆ けれども、夜とはいったいなんだろう? 大きくなるにつれて、寝る時間はすこしづつ遅くなっていったけれど、いつワタシは夜の意味を知ったのだろうか? |
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