MEMORANDUM

  マスク

◆ おとなになってからというもの、インフルエンザに罹った記憶がない。風邪気味だったことはあるけれど、風邪で寝込んだ記憶もない(これは記憶のほうがあやしいかもしれない)。加えて花粉症でもないようなので、マスクをしなくてすむのは幸いなことである。マスクにかぎらず、メガネや手袋やマフラーなど、なんであれ 「余分に」 を身につけることがきらいなタチなので、これはほんとうに幸いである。とはいえ、もし日本でSARSや鳥インフルエンザが流行したら、そんな呑気なことは言っていられないのだが・・・。画像は 《香港大学》 のSARS予防のポスター。

◆ 日本では、たんなる風邪でも、風邪をひいたら、あるいは風邪をひかないように、マスクをするというのがなかば常識であるようで、ネットをちょっと検索するだけで、電車のなかで、あるいは職場で、となりのひとがゴホゴホ咳をしているのにマスクをしていないことに腹が立った、というような記事を個人の日記からいくらでも拾い上げることができるのだが、このマスクを着用するという常識は日本に特有のことらしく、西洋人にはかなり奇異に見えるらしい。

◆ イギリス在住の日本人のエピソード。

◇ 風邪気味だったのでマスクをして会社に行った。仕事中、同僚達がこちらを見てくすくす笑っている。「マスクに何か付いているのかな?」 と調べても、何も付いてはいない。 / しばらくして、一人が 「奥さんと昨日、けんかでもしたのか?」 と聞いてきた。口元にあざがあるのではないかと思われたらしい。これじゃうっかりマスクも付けられない。
www2s.biglobe.ne.jp/~keri/mask.htm

《Sweetbrier Lane》 というサイトからふたつの事例。ひとつは長野オリンピックの取材に来たイタリア人記者が書いた記事。

◇ それにしても結構な数の日本人が、白い布でできた‘マスク’とやらで顔を覆っている。あれは何だ?最初は驚いたが、なんでも風邪が広まるのを防ぐのと予防のためらしい。かの人々はごくまじめに着けているのだが、どう見ても非科学的で、かなり笑わせる。
homepage3.nifty.com/atsukina/sub2-4.htm

◆ もうひとつはドイツ人の友人が日本に来たときの発言。

◇ 「飛行機の中でたくさんの日本人が白いホラ、なんかこーんなマスクをしてたんだけど、あれはいったい何だ? おまじないなの? それとも何か宗教的なこと? おしえて! けっこうたくさんの日本人がしてたんだよ。」
Ibid.

◆ 日本に来たアメリカ人をガイドしたひとのエピソード。

◇ 路線バスに乗っておしゃべりしていたら、突然顔をこわばらせて「あの人は何ですか?」。目で示す先にはコートを着てマスクをした中年男性がバスに乗ってきたところでした。「風邪が流行っていて・・」 と話していたら、日本人は風邪を引くとマスクをして町を歩くのかと聞くのです。その人はニューヨークから来た外科医なのですが、アメリカでは外科医が手術をする時以外にマスクをしたり、まして町を歩くという事はないのでびっくりしたと言われました。その後他のアメリカ人にも聞いてみたのですが、町でマスクをして歩いている一般人を見た時はびっくりしたそうです。風邪を引いた時にはマスクは快適ですね。でもアメリカ人には異様に映ったようです。
hamakko.info/english1.html

◆ なだいなだのフランス人の奥さんのエピソード。

◇ ぼくはマスクと片仮名で書いてあるから、あれは西洋起源のもので、日本人が輸入したものだと思っていたら、家内がフランスから日本にやってきて、「あれは何だ」(笑)。西洋にあんなものはないというんです。それで彼女が大学でフランス語の授業をやっている時に、風邪がはやって、生徒が何人もマスクをしてやってきた。そうしたら彼女、これを、質問しても答えませんというストライキだと思っちゃった(笑)。
長田弘・鶴見俊輔・なだいなだ・山田慶兒 『歳時記考』(岩波同時代ライブラリー, p.237-238)

◆ 理解できないことをなんとか理解しようとするときのそれぞれの反応がそれぞれにおもしろい。

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