MEMORANDUM

  桜雑炊

◆ ちかごろ、街中でひとり言をつぶやくひとがやけに増えたような気がしてならない。そのことを問題すると、ハナシがややこしくなりそうなので、さしあたってはたんなる酔っ払いということにしておく。

◆ 1月29日夜の8時半、仕事が終わって京王線の八幡山から快速電車に乗ったら、運悪くその車輌に酔っ払いのいかれたオヤジがひとり鎮座ましましていて、なにやら呪文を唱えておられた。オヤジの周辺にはおおよそ半径5メートルほどの見えないバリアができていて、だれもその聖域に近づくことはない。妙な緊張感が漂っている。まあよくある風景である。で、車内アナウンスが、「次はサクラジョウスイ、桜上水に停まります」 と告げたときに、聞くとはなしに聞いていたそのオヤジの呪文の内容がはっきりと聞こえた。

◇ 「オレハカタイノジャナイトダメダ」

◆ 軟らかくてはいけない、硬くなくては。なんのことだろう? あれこれ考えるひまもなく、オヤジがその答えを教えてくれる。

◇ 「サクラゾウスイ、サクラゾウスイ。ゾウスイハダメダ。ゴハンハカタイノジャナイトダメダ」

◆ そのオヤジがその桜上水で下車したことで、緊張感が解け、みなはホッとする。そして、ワタシは、桜雑炊とはいったいどのようなものだろうかと考え続ける。サクラの花びらを散らした雑炊だろうか? 悪くはない。春になったら・・・

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