MEMORANDUM

  ブルース・リーにピカチュウ

◆ 集中力というものがまったく欠けているので、ある本を手にとって読み始めて五分後にはまたべつの本に手を出している。だからいまなんの本を読んでいるのかと聞かれても、答えるのが難しい。読み始めたが読み終えていない本が山積みで、まさかそれらの本のすべてを挙げるわけにもいくまい。またおすすめの本はと聞かれて、あれこれおもしろかった本はあるけれども、じつはおもしろかった部分というのは、その本のテーマとはなんの関係もないところだったりもするので、これまた答えるのが難しい。集中の反対語はなんだろう? 散漫だろうか? 散漫な読書。たとえば、

◇ 一九八〇年代から九〇年代にかけてしばしばモロッコを訪れたわたしは、街角のいたるところで子供たちからブルース・リーと呼ばれたり、路地に立ち塞がって 「アチョー!」 と叫ばれたりすることがあった(もちろんこちらがポーズをとって、より大きい声で 「アチョオチョオ!」 と叫ぶと、急に真剣な表情になって後ろに退いてしまうのが常であったが)。
四方田犬彦 『ブルース・リー 李小龍の栄光と孤独』(晶文社,p.15-16)

◆ 五分後。

◇ 向こうのレストランに行ったらさあ、「ピカソ」「ピカソ」 と言われるんですよ。イタリーのテレビのインタビューで、他の作家で言うと自分は誰に当たるかって訊かれたから、苦しまぎれに 「ピカソ」 って答えたの。そんで、レストランのコックさんたちが俺を見て 「ピカソ」 と言ってんのかと思ったら、やつらは 「ピカチュウ、ピカチュウ」 って言ってたんだよ。参ったネ~。
荒木経惟 『天才アラーキー 写真ノ方法』(集英社新書,p.124)

◆ ブルース・リーにピカチュウ。あとは、おしんかなあ?

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