◇ 近代的なスタイルの国語辞典の第1号 『言海』 は、「読める辞書」 としても絶大な人気を誇ってきた。語釈には 「堂々めぐり」 がほとんどなく、意味の本質に迫るキリッとした名文づくし。とりわけ動物・植物・鉱物などの語釈がシブい。ユーモアさえ漂う。明治時代の俗語もまじり、方言などの注記もある。用例も豊富で、古典アンソロジーのような一面も。巻頭の 「語法指南」 は日本最初の近代的な文法書として愛用された。明治のことばの辞典として、また古語辞典としても役に立つ。国語辞典として使うための詳しい解説つき。縮刷版 (明治37年) の内容をそのままの大きさで覆製。 ◆ ことのほかオモシロイ。たとえば、「ばいう」 の項を引くと、 ◇ ばい-う (名) 梅雨〔梅實黄熟ノ候ニテ、黄梅雨ノ義ト云、或云、此候、衣物皆黴ヲ生ズ、黴雨ノ義ナリト〕ツユ。ツイリ。サミダレ。夏時ノ霖雨ノ名、芒種ノ後、壬ノ日ニ逢フヲ入梅(つゆいり)トシ、夏至ノ後、庚ニ逢フヲ出梅(つゆあけ)トスト云、然レドモ、諸説、區區ナリ、大抵、芒種ノ後、降リ初メテ、凡ソ三十日間ニシテ、雷鳴アリテ絶ユ。 ◆ 「芒種ノ後、降リ初メテ、凡ソ三十日間ニシテ、雷鳴アリテ絶ユ」。最後の 「雷鳴アリテ絶ユ」 というのが、なんともいえず爽快である。ああ、夏の晴れた空から突如として響く雷鳴が待ち遠しい。出梅はまだ遠い。 |
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好きな作家に高田宏さんという方が居られるんですが、
http://www.p-well.com/library/dmh/2005/dmh75.html
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4002603415/250-8976710-1164262
ここにあるように、「言葉の海へ」という作品で大佛次郎賞を受賞されていますよね。
この本はまだ読んでいないんですが、「木に出会う」が好きです。あと猫本などは結構読みましたっけ。